【平成の長崎】島鉄全線開通 車窓から4年ぶりの風景 被災地にくぎ付けの乗客 平成9(1997)年

 「感慨無量」「心からうれしい」-1997年4月1日、4年ぶりに全線開通した島原鉄道の長く険しかった道のり。島原駅で開いた開通式会場で、関係者は晴れやかな中にもしみじみとした表情。ホームを行き交う利用客の顔にも笑みがこぼれた。
 午前8時43分、通勤客らで埋まった諫早駅上り列車が深江駅を出て水無川被災地を通過すると、乗客の目は窓にくぎ付け。変わり果てた流域、復興のつち音響くスーパー砂防ダム建設現場、朝日にそびえ立つ雲仙・普賢岳などの光景に、じっと見入った。
 長崎市内の病院に通院するため以前から島鉄を利用している南高深江町丙、農業、清水さん(80)は「代行バスを使っていたけど、やっぱり列車がいい」とニッコリ。「駅と家が近くで、愛着もありますから」と喜んだ。
 口之津町に定期的に足を運ぶ島原市白山町、経理事務所従業員、古瀬さん(48)は被災地の景観に「新しい島原を発見したような気分です」と驚きながらも、「地域に密着した鉄道として頑張ってほしい」とエールを送った。
(平成9年4月2日付長崎新聞より)
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【平成の長崎】は長崎県内の平成30年間を写真で振り返る特別企画です。

全線開通式でテープカットする高田知事(右から2人目)ら=島原駅

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