【現場を歩く】〈上海開催の「中国国際ワイヤー産業展」〉世界の関連企業1100社超出展、最新技術や高品質の製品PR 中国メーカーの品質向上も

 中国を中心に世界各国のワイヤ関連企業1100社超出展の「中国国際ワイヤー産業展」が26~29日の4日間、上海新国際博覧中心で開催した。今回で8回目を迎えた同産業展の出展企業は、世界各国のワイヤ・ファスナー・ねじ・ばね製造、加工機、付属品関連企業など多岐にわたる。出展する日本の鉄鋼二三次メーカーの概要や展示製品などを中心に産業展の様子を紹介する。(中国・上海=綾部 翔悟)

宮崎機械システム/軽量化トンスで作業効率改善

 伸線機などのワイヤホーミングマシンの総合メーカーである宮崎機械システムは、軽量化トンスをブースで紹介した。同製品は、伸線作業の中でも最も労力を要すトンス掛け作業において、トンスのチェーン部分に特殊繊維ロープを採用することで強度を損なわずに軽量化を実現した結果、作業効率の大幅な改善につながる。多数の伸線作業者から好評を得ている商品だ。そのほか、ブースでは同社が取り扱う伸線機や抽伸機などの特徴を紹介した映像を流し、自社製品をPRした。

 また、同社の中国子会社で伸線機などの販売および調達を行う宮崎貿易も出展し、同社が取り扱う設備機械を展示した。同ブースを視察した宮崎和昭宮崎機械システム社長は、「アジア圏を中心に数多くの企業が当社のブースを訪れたことは非常に嬉しい」と語った。

ベカルト/橋梁用ワイヤロープ、安定した耐久性持つ

 世界最大手の鋼線メーカーであるベカルトは、橋梁用ワイヤロープなどを展示。同製品は、安定した耐久性を持ち、高耐腐食性といった特徴があるだけでなく、加工性にも優れている。また、高い剛性で、耐久性や安全性に優れるフェンス関連製品や、ケージ向けおよびじゃかごといった同社の高品質製品もPRした。

 ベカルトは、高付加価値のワイヤ製品とコーティング技術を通じて独自の商流や物流を構築しており、全世界で線材二三次加工の標準化が進む中、品質の安定性とコスト競争力、生産能力の大きさが特徴だ。

 同社は売上げ全体で3割近いアジア市場で設備投資を進め、潜在需要を捕捉していく方針。アジア大洋州地域には、タイヤコードといった鋼線や、硬鋼線、金属繊維などの各種スチールワイヤ製品について、中国、インドネシア、マレーシアをはじめ約20カ所の生産拠点がある。

コースワイヤ/自動車や航空機械、医療用ワイヤ展示

 ステンレス鋼線メーカーのコースワイヤは、本社がある韓国国内の工場で製造しているハイグレードなワイヤロープ製品などを展示。同社が製造するステンレスワイヤやチタンワイヤは自動車や航空機械部品などに採用されている。ユーザーからも好評で、同製品の売上は好調。また、韓国で需要が堅調な、SUS304の半導体関連製品も展示した。そのほか、同社が昨今、注力している医療部品に用いるメディカルワイヤなども展示し、来場者にPRした。医療用ワイヤに関しては、韓国でのシェアが非常に高く、中国でのシェアも徐々に増加傾向にある製品も展示した。

 コースワイヤは、国外支社が11カ所あり、日本を含めた全世界市場に向けて、高品質なスプリングワイヤや金網用ワイヤといったステンレススチールワイヤおよび、ステンレスのワイヤロープを輸出している。

ブリティックス/ワイヤロープ、安定した品質が強み

 中国とタイに製造拠点を持つ世界大手ワイヤロープメーカーのブリティックスは、安定した品質が強みのワイヤロープを展示した。同社の販売拠点は中国国内に8カ所あり、製造拠点は国内外に3カ所ある。同社製ワイヤロープやスリング製品は自動車やエレベーター向けなどに使用され、中国を中心に、ヨーロッパや日本およびアメリカなど世界各国で使われている。

 日本を含めて、各国からの受注が年々増加している中、同社は今年、生産量10%以上の増産を目指しており、そのためにも市場開拓と設備投資に重きを置いている。その一環で、東南アジア・インド・北米への自動車向けコントロールケーブルや海事用ロープの拡販なども視野に入れている。また、生産性向上のためのERPシステムの更新、環境保護対策用設備といった設備投資も随時進めていく方針だ。

DSR/ばね用ワイヤなど品質・技術力高い

 亜鉛めっき鋼より線やワイヤロープなどを製造するDSRは、ばね用ワイヤなどを展示した。同社は、本社がある韓国国内の順天や光陽に生産拠点があるだけでなく、ベトナムなどにも工場を持つ。ばね用ステンレス鋼線やOT線、硬鋼線といった製品で、品質・技術力も高い。また、日本を含めた世界約100カ国で同社の製品は使用されている。今後も建設現場・造船所・海洋プラントなど多岐にわたる分野で、独自の品質システムを駆使し、優れた品質の製品を提供する考えだ。

ファスナー関連や電線設備メーカーも

 世界大手電線設備メーカーのニーホフや合肥神馬科技集団、硬鋼線・ピアノ線などを製造する鶴山恒基鋼絲製品などワイヤ関連の様々な企業が出展し、自社製品をアピールした。また、ファスナー関連設備メーカーが多数出展。ブースを訪れた日系ファスナーメーカーは「中国のファスナー関連設備メーカーの品質が向上していることに驚いた」と話すなど、設備メーカーの技術の向上がうかがえる。

 そのほか、電線の材料や設備、ファスナー産業の展望と課題いった様々なセミナーが開かれた。

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