製鉄プラント「小型化」ブーム 小回り重視、品質も向上

薄板や条鋼、製鋼と圧延を直結

 世界各地で製鉄プラントの「小型化」がブームになっている。投資費用が少額で済み、小回りが利いて需給変動へ対応しやすいことに加え、プラント技術の向上に伴ってコンパクトな機械でも相応の品質の鋼材を造れるようになってきたことが普及につながっているようだ。

 米国のアーカンソー州で2017年に本格開業した新興の電炉メーカー、ビッグ・リバー・スチール(BRS)。同社の「売り」は年産能力170万トンの電炉からコンパクトな薄スラブ連続鋳造機で熱延コイルや冷延・表面処理鋼板を造ることだ。

 米国ではニューコアなど電炉メーカーが世界の中でも早くから薄スラブ連鋳に類するコンパクトなプラントを採用してきた。その中でもBRSが導入した薄スラブ連鋳は、ドイツ製鉄プラント大手のSMSが各国で売り込んでいる「CSP」。米では最新鋭の設備で、初めから高付加価値分野を照準としている。

 BRSの構内には鉄スクラップだけでなくホットブリケットアイアン(HBI)や銑鉄の塊も積まれ、最新プラントと高純度の鉄源を駆使し、電炉から「X70」クラスの鋼管用母材も量産している。すでに上工程から溶融亜鉛めっきライン(CGL)までフル生産だが、今後の増強次第で自動車用への供給も狙っていく。

 薄スラブ連鋳はSMSの「CSP」に限らず、三菱重工業系の英国・プライメタルズ・テクノロジーズ(PT)や、イタリアのダニエリも受注を広げている。PTの「ESP」は中国民営大手の日照鋼鉄で大量採用され、最近では河南亜新鋼鉄で新たに受注を獲得。これらは生産性が落ちるため中国の他社が敬遠しがちな薄手の建材製品向けホットがターゲットとされる。

 ダニエリの「QSP」はベトナム鉄鋼大手のホアファットが建設しているズンクワット新製鉄所や、中国・首鋼京唐鋼鉄連合の曹妃甸製鉄所で採用され、中でも首鋼では全て国内の自動車向けに供給する方針という。

 これらの特徴はスラブと熱間圧延が直結しているため熱効率が高く、エネルギー消費量などを減らし運転コストを下げられる点だ。年産能力も150万~300万トンと、500万トンを超える従来の大規模な熱延ミルより小ぶりで、導入のハードルを低くできる。かつては品質的に建材用途が専らだったが、製鋼技術の上昇で徐々にエネルギー用の鋼管や一部の自動車用途にも耐え得るプラントとなりつつある。

 小型化は条鋼類のプラントでも進んでいる。ダニエリはビレット連鋳と圧延を直結させ、従来の棒鋼・線材ミルよりスペースを半分以上減らした省力型の「マイクロミル」を開発。建材用の条鋼を地産地消する「リージョナル・ミル」がコンセプトで、最少30万トン程度から導入できる設計としている。

 マイクロミルは米国の電炉メーカー、コマーシャル・メタルズ(CMC)で初めて導入され、以降はニューコアやエジプトのIICで採用されてきた。7月にはアジアで初めて中国の桂林萍鋼鋼鉄が採用を決定。桂林はスタンドを増やすことで、来夏にマイクロミルでは最大となる120万トンの棒線ミルを稼働させる。先月には中国・山西建邦集団の山西通才工貿も60万トンの同ミルを発注した。

 上工程の高炉でも、ベトナムやインドネシアといった東南アジアで計画されている案件は炉内容積が2千立方メートルに満たないものが多い。4千~5千立方メートル級の新設は中国宝武鋼鉄集団の湛江製鉄所やJFEスチールなどが出資する越フォルモサ・ハティン・スチール(FHS)といった技術力ある世界大手系に限られる。新興企業には操業が難しい大型高炉を敬遠し、安く導入できる小型高炉で出銑比を高める風潮が強まっている。

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