【素材技術で新市場に挑む シリーズ「EV化」企業編(4)】〈昭和電工〉負極材、ラミネート包材などリチウムイオン電池市場を開拓 20年に電池材売上高300億円へ

 「リチウムイオン電池(LiB)材料は、中国EV市場の需要回復や欧州市場の需要拡大によって事業環境が整いつつある。高容量、低抵抗、長寿命を特徴とする製品群で市場を開拓する」。今年8月に開かれた中間決算会見で、昭和電工の森川宏平社長はLiB材戦略を語った。

 昭和電工はLiB材を、次期中期計画期間中の利益拡大を目指す「優位確立事業」に位置付け、負極材など五つの製品でLiB市場へ多面的にアプローチしている。

 主力製品の一つであるLiB負極材料「SCMG」は、黒鉛電極製造で培った熱処理技術などを活用することで、低抵抗(高出力)と長寿命を実現した。現在は国内で年1500トンの生産能力を持つ。さらなる高容量を実現するため、シリコンと黒鉛を複合化した「Si黒鉛複合負極材」を開発し、電池メーカーでのサンプル評価を進めている。

 アルミ箔に樹脂を張り付けて造るラミネート包材「SPALF」は、パウチ型(ラミネート型)LiBの外装材として広く採用されている。世界シェア4割を占める業界2位の昭和電工は、足元の生産能力を2010年比で3倍まで増やし、需要増に対応している。現在は主力のモバイル向けだけでなく、EV用途での採用拡大を目指している。

 このほかLiBの急速充電を助ける正負極用導電助剤「VGCF」は、17年の設備増強を経て年産能力が300トンに拡大。アルミ箔に高導電性カーボン粒子とバインダーをコーティングしたLiB正極用集電箔「SDX」と独自ポリマー構造によるLiB負極用水系バインダーの2製品は、高速充放電と長寿命化に寄与できるとして引き合いが増えている。

 これらの製品を扱うのが17年1月に事業部へ格上げされた「先端電池材料事業部」。個別製品ごとに事業部が構成される昭和電工で唯一、需要分野で顧客対応している。今年4月には電池材販売の大部分を占める中国に販売会社を設立し、営業体制を強化した。事業部として20年に売上高を300億円まで拡大させる計画だ。

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