豪州SC:第13戦バサースト1000で引退発表のラウンズが7勝目を上げ有終の美

 VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーのシーズン最大の1戦、第13戦スーパーチープ・オート・バサースト1000が10月5~7日にマウント・パノラマで開催され、2018年限りで現役引退を表明している大ベテラン、クレイグ・ラウンズとスティーブン・リチャーズ組(ホールデン・コモドアZB)が逆転で勝利し、ラウンズはキャリア最後の年にバサースト7勝目を挙げる有終の美を飾った。

 チャンピオンシップの1戦ながら、F1のモナコGPやインディ500のように“シリーズ最大の祭典”として認識されているバサースト1000。オセアニア地域出身のドライバーたちが口々に「バサーストに出場したい。バサーストで勝ちたい」と語るステータスの高い1戦は、同時に年間3戦が設定されるレース距離500マイル越えの『エンデューロ・カップ』第2戦にも指定され、2名1組のペアリングで戦うイベントにもなっている。

 そのマウント・パノラマのトラックで暫定ポールポジションを獲得したのは、名門トリプルエイト・レースエンジニアリングの王者ジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB)で、2分04秒1093をマーク。

 しかし続く予選トップ10シュートアウトのセッションでチャンピオンに立ちはだかったのは、前年度バサースト勝者のエレバス・モータースポーツ勢。エースのデビッド・レイノルズ(ホールデン・コモドアZB)がウインカップをわずか0.009秒上回り、2018年大会のポールポジションを獲得した。

 そしてセカンドロウ3番手には、ルーキードライバーとしては2002年以来のシュートアウト進出となるチームメイトのアントン・デ・パスカーレ(ホールデン・コモドアZB)が並び、その隣4番手にはウインカップの僚友で選手権リーダーのSVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB)がつけ、予選トップ4はエレバスvsレッドブル・レーシング・オーストラリア(RBRA)の対決構図が完成した。

 日曜、161周の決勝スタートから順当に首位をキープしたポールシッターのデビッド・レイノルズ/ルーク・ヨールデン組は、その後も終始レースを支配。その後方ではバサーストの洗礼を浴び、上位勢に次々とトラブルが襲いかかる。

 序盤33周目には今季からウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド(WAU)に生まれ変わったチームで引き続きエースを務めるジェームス・コートニー(ホールデン・コモドアZB)が、エンジントラブルによりマシンが生き絶えストップ。

 続く45周目には王者RBRAにも災難が襲い、ウインカップとペアを組むポール・ダンブレルがドライブするコモドアZBは、先頭集団で優勝を争っていたにもかかわらず走行中に右前輪が外れるアクシデントに見舞われてしまう。

 1コーナーへのターンイン目前でこのトラブルが発生したダンブレルは、なんとか3輪状態のマシンでフルラップを走りきりピットへと帰還。修復作業を経て周回遅れでコースへと復帰し、のちのセーフティカー(SC)ピリオドで同一周回には戻れたものの、10位まで挽回するのが精一杯。

さらにレース後にはペナルティとして、チームチャンピオンシップからの30ポイント剥奪と、5000豪州ドル(約40万円)の罰金が課された。

 そしてレース中盤にはティックフォード・レーシングのチームメイト同士でアクシデントが発生し、チャズ・モスタート(フォード・ファルコンFG-X)がキャメロン・ウォーターズのペアを務めるデビッド・ラッセル(フォード・ファルコンFG-X)とサイド・バイ・サイドとなり、モスタートにプッシングされたラッセルのファルコンはウォールに激突。

 これでウォーターズ/ラッセル組はピットで長い修復期間を過ごすこととなった一方で、モスタートは4位フィニッシュを果たし、レーススチュワードはこの接触を「レーシングインシデント」としてペナルティを科さない判断を下したことで、チーム内に禍根を残す出来事となった。

 さらにレース終盤に向けた最後の波乱は、首位を快走していたレイノルズにも襲いかかる。周回数が100周を越えた頃からレイノルズの足が痙攣に見舞われペースダウン。135周目にはトリプルエイトのサテライト、予選9番手スタートのオートバーン・ラウンズ・レーシングに首位を明け渡すことに。

 最終ストップでも事態はさらに悪化し、両足の痙攣のせいでクラッチミートが満足にいかなかったレイノルズのマシンはピットロードの発進で激しくホイールスピン。これがスポーティングレギュレーション違反となり、ドライブスルーペナルティで13位にまでドロップ。連覇の権利が失われる結果となった。

 ファイナルラップでは「バサーストでこんなに大量リードを持ってチェッカーを受けたことがない」とラウンズが振り返るように、2位のWAU、予選18番手からの追い上げで2年連続表彰台となったスコット・パイ/ウォーレン・ラフ組(ホールデン・コモドアZB)に6.3秒のマージンを持ってラウンズがフィニッシュ。見事に7度目のバサースト1000制覇を成し遂げた。

「それは本当にたくさんのことを意味する。まるで(全盛期だった)2006年に戻ったような気分だよ。僕らのマシンは週末を通じてステアリングにトラブルを抱えていたけど、チームの全員が信じられない仕事ぶりでこれを克服したんだ」と、満足げに語ったラウンズ。

「最後の3スティントは、クールスーツやヘルメットのエアコンが効かず少し疲れたけれど、チームのために最高の結果になった。レース序盤はスピードがなかったけれど、トラックコンディションが僕らに合ってくるのを待っていたんだ」

 最後の3位表彰台には選手権争いを展開するDJRチーム・ペンスキーのスコット・マクローリン/アレクサンダー・プレマ組(フォード・ファルコンFG-X)が入るも、ライバルのSVGも5位となり、からくもチャンピオンシップリーダーの座を堅持している。

 2018年シーズンも残るカレンダーは3戦。続く第14戦はエンデューロカップ最終戦でもある“ゴールドコースト600”が、10月20~21日に開催される。

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