胃がん予防、ピロリ菌無料検査へ 全額公費で横須賀市

 神奈川県横須賀市の上地克明市長は9日、市内に住む中学2年の全生徒を対象に、胃がんの原因とされるピロリ菌の感染検査を無料で行う方針を示した。若い世代に早期に検査や除菌を受けてもらい、市内でも割合の高い死因の予防につなげる。2019年度にも始めたい考えで、市によると、同様の事業に継続的に取り組むのは県内で初めて。

 市によると、ピロリ菌は胃の粘膜に生息する細菌。感染しても目立った症状がないため、胃炎が悪化して胃がんになる危険性がある。親らが保菌していると、食べ物の口移しなどで主に5歳くらいまでの子どもにも感染する。

 市は「尿」と「尿素呼気」の2段階で、検査を行う。一次は対象の生徒がいる世帯に尿検査用のキットを送り、市立中学校に通う生徒は学校が、それ以外は協力する市内の医療機関が回収する。

 陽性だった生徒には検査薬を飲んで呼気を集める二次を受けてもらい、二次でもピロリ菌が見つかった場合は、希望者を服薬で除菌する。

 市は一次(2千円)、二次(9千円)、除菌(1回2万円)の全額を負担。19年度の対象は3300人程度で、年間の費用は約1千万円を見込む。大人と同じ量の除菌薬を処方できる体格や高校受験など生徒の予定、さらに生徒が親になった際の子どもへの感染防止などを考慮し、対象を中学2年に設定した。

 市によると、16年に亡くなった市民(4456人)のうち、がんが死因だったのはおよそ3割(1261人)。胃がんは130人で、肺がん、大腸がんに次いで多かった。

 9日に開かれた市議会9月定例議会の本会議で、議員提案による市がん克服条例案が可決されたことを受け、市長が方針を示した。市長は「がんは治る病気と言われる。ピロリ菌の早期発見で、胃がんの撲滅を目指したい」とした。

 一方、条例は、がん健診の受診率を向上させて早期の発見や治療につなげるとともに、がん患者やその家族が有意義な時間を過ごせるよう、在宅医療や緩和ケアを充実させることなどを明記した。同趣旨の条例は、県内では県と横浜市が制定している。

がん医療の水準向上などを盛り込んだ市がん克服条例案を全会一致で可決した横須賀市議会 =9日

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