在宅介護 欠かせぬ電力【1】

課題と備え 胆振東部地震から1カ月

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 西胆振では現在、日常生活をほぼ取り戻している。胆振東部地震から1カ月。反省や課題、そして得た教訓などを探った。全5回。

   

災害弱者への対応

サクションで痰を取り出してもらっている西澤治廣さん(中央)。「災害弱者」にとって停電は命に関わる問題だ

 道内全域で長時間停電(ブラックアウト)が起きた胆振東部地震。「災害弱者」を支える家族は、自分で自分を守る覚悟と備えの必要性を感じた―と話す。

 西澤治廣さん(76)=室蘭市本輪西町。2013年(平成25年)、仕事で屋根の雪止め作業をしていたところ、約8メートル下の地面に転落。頭部外傷などで生死をさまよったが、現在は長女の広美さん(49)と次女の亜希子さん(46)をはじめ、訪問看護や訪問リハビリ、ヘルパーなどの助けを得ながら、在宅で生活を送る。

 ただ、その生活には電力が欠かせない。治廣さんが利用する機器は、(1)体を起こすことで誤嚥(ごえん)性肺炎の防止にもつながる電動ベッド(2)床擦れを防ぐために寝返りを助けるエアマット(3)呼吸困難を避け、気道を確保するために痰(たん)を取り出すサクション―など。いずれが欠けても「命の維持に関わってしまう」(亜希子さん)状態だ。

 地震直後。市立室蘭総合病院の看護師でもある亜希子さんは、同病院DMAT(災害派遣医療チーム)の一員として、苫小牧市立病院に派遣された。

 「いつ、戻れるか…。分からない」。亜希子さんの言葉を受け、広美さんは持病の疼痛(とうつう)に耐えながら、機器が担っていた定期的な体位変換など、治廣さんの介護を1人で行った。

 一番の心配は、サクションがいつまで動くか―だった。治廣さんが目を覚ましている時は10分に1回程度、痰を取り除かなければならない。ただ、サクションの充電量を踏まえると、半日~1日しか持たない。

 案の定、7日朝には充電量はほとんど無い状態に。広美さんは、約3キロ離れた避難所・サンライフ室蘭(同市港北町)に充電器を持ち込んだ。

 「優先的に充電してもらえて本当に助かった」(広美さん)が、充電と移動時間の計40分間、治廣さんは一人で過ごすしかなかった。「(いない時に)痰が詰まったら…ということばかりを考えた」(同)

 西澤さん宅は、地震から約38時間後の7日午後5時半すぎに停電が解消した。治廣さんが在宅で過ごすようになってから、長時間の停電は今回が初めて。広美さんは「停電が長ければ避難所に何回も行かなければならず、(どちらかの)身体が持たなかったかも」と話す。

 「災害時は確かに周りのフォローもほしい。しかし、ある程度の自助が必要、とも分かった」とし、「父の命を守るため、まずは自家発電機を買いたい」。治廣さんを見つめる姉妹は、発電機をプロパンガス式にするのか、ガソリン式にすべきか、話し合っている。

 「室蘭登別訪問リハビリテーション連絡会」の会員42人は、地震直後から患者の安否確認に奔走。患者宅を訪れ、停電時の対応などもアドバイスした。三政辰徳代表(製鉄記念室蘭病院訪問リハビリテーションセンター理学療法士)は、「災害弱者となる患者の存在が分かっている立場。安全・安心を感じてもらい、信頼されるよう、災害対応力も高めたい」とも話す。
(松岡秀宜)

(2018年10月6日掲載)