事件を鏡に将来考えたい ぐいぐい聞き取り、現地調査も

日本と台湾のカネミ油症を研究する中国人大学院生 金星さん(28)

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 有害な化学物質や猛毒のダイオキシン類などが混じった食用油が1968年に販売され長崎県などで被害が広がったカネミ油症事件は、初めて報道されてから今月10日で50年。この節目に同事件や同じような台湾油症事件を研究する中国人の若者がいる。長崎大大学院の水産・環境科学総合研究科博士後期課程3年、金星さん(28)だ。今の思いなどを聞いた。
 中国遼寧省撫順市出身。子どもの頃は、テレビで日本のアニメーション「NARUTO」「ワンピース」などが放映されていて、よく見ていた。高校時代、米国の文化人類学者ルース・ベネディクトの日本文化論「菊と刀」を読み、一層日本に興味が湧いた。
 大連外国語大の3年次に長崎外国語大に編入。長崎大大学院に進み、環境問題を分かりやすく伝える「環境文学」をテーマに据えた。もともと中国の大気汚染に関心があったからだ。
 カネミ油症、台湾油症のことは、長崎大の戸田清教授の講義で知った。いずれもポリ塩化ビフェニール(PCB)が食用油に混入、販売されて発生。台湾油症は視覚障害児が過ごす学校を中心に被害が出た。金さんは「中国には食品公害の研究がほとんどない。日本、中国、台湾で、この事件を鏡として将来を考えたい」と話す。
 油症に加えて、水俣病も研究。▽食品衛生法の一部見直し▽公害の定義を広げカネミ油症を範囲に入れること▽新しいカテゴリーとして「食品公害」を設定すること-など、解決策を考察した。
 持ち前の明るさで、今も被害者や支援者、研究者にぐいぐい近づいて、いろんな話を聞き取っている。台湾でも現地調査をした。
 金さんの目から見ると、日本は不思議なことばかり。日本人は優しいが戦争の頃は中国でひどい仕打ちをしたこと、宗教が混在していること、多くのトイレでおしりを洗うことができること-。でも、日本の文化や日本人の性格は大好き。大学院を終えた後も日本で働きたいと考えている。
 「油症被害者は皆、親切で優しかった。もっと調べていきたい。大事なのは被害者の声に耳を傾け、被害者の立場で考えること、そしてそれを社会に生かし貢献すること」と思いを語る。
 日本の高校生へのメッセージを尋ねると、「今年は日中平和友好条約発効から40年。これからも交流することが大事です。それから社会や環境にもっともっと関心を持ってほしい」と話した。

「カネミ油症と台湾油症を鏡に将来を考えたい」と語る金さん=長崎新聞社