ロシア、究極のパワハラ明らかに

By 太田清

ロシアの10ルーブル硬貨。ウィキメディア・コモンズから

 ロシア極東アムール州ゼヤ市の小児病院で、長年小児科医として働いていた女医に対し、給与を硬貨で支払う嫌がらせがあった。硬貨の重さは計35キロにも達し、州知事が「受け入れがたい行為」と批判する騒ぎとなっている。アムールスカヤ・プラウダ紙(電子版)などが伝えた。 

 女医は40年以上医師として働いているタマラ・ゴルプツォワさん(69)で10月8日、9月分の給与を受け取るため経理窓口に行ったところ、給与のうち2万1000ルーブルは紙幣で支払われたものの、残る3万6000ルーブル(約6万円)については額面10ルーブル(約16円)などの硬貨を二つの袋に詰め渡された。袋はそれぞれ20キロと15キロの重さがあったという。 

 ゴルプツォワさんが抗議すると、経理担当者はイーゴリ・ホミトフ医長の指示でわざわざ多量の硬貨を用意したとして、嫌がらせであることを認めた。興奮して泣きだしたゴルプツォワさんを見て同僚が救急車を呼び、会計担当者らの指示で、ゴルプツォワさんは硬貨が入った袋とともに救急車で自宅に帰った。ゴルプツォワさんは「長年多くの医長に仕えてきましたが、こんな恥辱を受けたのは初めて。本当に悔しい」と憤っている。 

 ゴルプツォワさんは以前から、給与について銀行カードを用い受け取るようホミトフ医長から要請されていたがこれを拒否。現金での受領に固執したため嫌がらせを受けたとみられる。 

 事件を知った同州のワシリー・オルロフ知事は「自分の地位や職務を利用して、このような方法で自らの考えを他人に押しつけるやり方は受け入れがたい」とパワハラに当たるとした上で、保健当局に調査を指示するとともにホミトフ医長から事情を聴く意向を表明。さらに、ホミトフ医長ら病院幹部らに対しても、給与を硬貨で支払うことを提案した。 

 同州の検察当局は「給与を現金で受け取りたいというなら、病院は応じる義務がある。その際は、お金を受け取るのに障害がないようにすべきだが、大量の硬貨で支払うのは障害に当たる」とコメントした。 (共同通信=太田清)

© 一般社団法人共同通信社