そごう・西武、廃棄用垂れ幕をアートバッグに再利用

そごう・西武は10月9日、広告用に店舗壁面などに掲示された使用済みの懸垂幕で製作したアートバッグの販売を開始した。デザインは文化服装学院、東京デザイン専門学校(両校とも東京・渋谷)の学生が担当。製作は、廃材を再利用したトートバックなどを手掛けた経験があるスーパープランニング(静岡県浜松市)が担当した。懸垂幕の丈夫な素材と多様な柄を生かし製作されたバッグは、150点限定で11月5日まで西武渋谷店で販売される。(オルタナ編集部=堀理雄)

捨てられようとしている不用品や廃材を利用して、新たな製品や価値を生み出すことを「アップサイクル」と呼び、近年注目を集めている。廃棄用の広告用懸垂幕を利用してアートバッグをつくる今回の取り組みは、百貨店を展開するそごう・西武ならではのアップサイクルといえる。

今回の取り組みでは渋谷区の2つの学校と企業、また行政としての渋谷区も後援に加わり、多様な主体が関わる中で企画が実現した。デザインを学生が行い、若い感性を生かした製品である点が特色だ。

文化服装学院3年の原美波さんは、10月9日のオープニングセレモニーで、「懸垂幕は同じ色や柄がない。制約のなかで素材を生かしデザインすることが楽しかった。製造・販売に向け、仕様書でデザインの内容を伝えることが難しかった」と発言。

東京デザイン専門学校2年の大竹まいさんは、「渋谷のスクランブル交差点を模したロゴで、色々な人が交わる今回の企画を表現した」と語った。

オープニングセレモニーで発言する文化服装学院3年の原美波さん(左)と東京デザイン専門学校2年の大竹まいさん(10月9日、東京・渋谷の西武渋谷店で)

社員のアイデアから企画実現へ

企画発案のきっかけは社内コンペティションだった。同社は、社会課題を自社の強みで解決し、持続的成長につなげる「CSV(Creating Shared Value)」の取り組みに力を入れている。その一環としてCSVの理解や認知度が低い点を改善しようと、昨年に社内でアイデアコンペを実施。計481件が集まり、そのなかの一つが今回の企画だった。

同社CSR・CSV推進室の薄井徹さんによれば、コンペを実施した当初は成果物の販売などを行う着地点までは想定していなかった。しかし、審査の段階で社長を含めた審査員で検討した結果、製造・販売の方針が決まったという。

実際の製造に向けて、渋谷区に拠点を置くブランド「ROOTOTE」を展開し、廃材を利用したトートバッグの製作も手掛けるスーパープランニングと協働することになった。

スーパープランニングの社内で、デザインから製造までを完結して行う計画もあった。しかし両社の話し合いの中で、渋谷という街を中心に、多様な主体が参加して企画を進めていく方針が決まり、デザインを専門とする学生との協働で製作が進められた。

スーパープランニングの神谷富士雄常務取締役は、デザイン、製造、販売といった協力関係を地域内でつくることができたという意味で、「渋谷でよかった」と振り返る。さらに「バッグが実際に使われることで、それを見た人に製品のストーリーが伝わってほしい」と展望を述べた。

渋谷の街を中心に、企業、学校、行政など多様な主体が関わり企画が実現した

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