金属行人(10月12日付)

 10日、NYダウ平均株価が約832ドル下落した。史上3番目の下落幅で、金利高や貿易摩擦が影響したという。日経平均株価もこれに伴い下落している。一方、内閣府が発表した機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる今年8月の民需(船舶・電力を除く)受注総額は9815億円だった。これは2008年1月以来の高水準で、実体経済は堅調に推移しているようだ▼この株価急落は実体以上を示していたことによる修正なのか、それとも今後の景気減速を示すものなのかはまだ分からない。とはいえ、戦後最長期間の景気拡大が続くものの、米中貿易摩擦など不安要素も確かに目立つようになっている▼ここ数年、鉄鋼業界はメーカー・流通を問わず、業績は堅調ないし好調に推移した。多くはないが過去最高益となったところもある。中国の供給過剰問題がおおむね解消された後、アジアの鋼材価格は安定して推移した。今も粗鋼増産に対する規制は強く、供給過剰への懸念もあまり聞かれなくなった▼今回の株価下落は不景気の幕開けなのかどうか。ただ、日本鉄鋼業でも好景気にあった中、過剰設備の淘汰、合理化・省力化などを進め、鉄冷えに耐えられる体制を整えてきた。厳しいときこそ、その真価が発揮されるのではないか。

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