地方再生「センスある田舎」人気 南小国町・黒川温泉 <平成くまもと30年>

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各旅館が一体となってまちづくりに取り組み、全国的に有名になった黒川温泉=2000年8月、南小国町
1965(昭和40)年の黒川温泉。ひなびた湯治場だった
黒川温泉街の地蔵堂に観光客が結び付けた入湯手形。多くの観光客に利用されている=2006年4月、南小国町

 全国的にその名が知られる南小国町の黒川温泉。ひなびた湯治場だった温泉街を一躍有名にしたのは、各旅館が一体となってまちづくりに取り組んできた成果だった。

 かつては数軒の旅館が点在する湯治場だった同温泉。1970年代に入り、「客を呼び込もう」と各旅館の2代目らが露天風呂の整備に取り掛かった。浴衣が似合う温泉街にするため、各旅館の看板の色やデザインを統一したり、植樹にも力を入れたりして、田舎の原風景の再現にも腐心。86年には、3軒の露天風呂に入れる「入湯手形」を発行し、人気は急上昇した。平成に入ると全国的に知られるようになり、宿泊客数は、ピークの2002年度に約40万人に達した。ふもと旅館を営む松崎郁洋さん(65)は「大型のリゾート開発に走る観光地が多い中、お金もお客さんもいない黒川ができたのが、センスのある田舎づくりだった」と振り返る。

 しかし、熊本地震が発生した16年度は、平成初期と同水準の約22万人にまで激減。それでも逆境にめげず、「何かやれることをやろう」と、由布院温泉(大分県由布市)との連携企画や、周辺の観光団体などと「やまなみハイウェイ観光連絡協議会」を設立してPR活動に取り組んだ。

 17年からは、各旅館を合わせて一つの旅館とみなす「黒川一旅館」の理念を発展させ、地域全体を観光客の故郷にしてもらう「黒川一ふるさとプロジェクト」を実施。農家がつくる朝食を宿泊客が楽しむイベントなどを企画している。

 黒川温泉観光旅館協同組合の北里有紀・組合長(41)は「黒川をみんなでつくっていくという理念は大切にしつつ、各旅館の個性をもっと出して、観光客に楽しんでもらえる温泉地にしていきたい」と力を込める。(後藤仁孝)

(2018年10月12日付 熊本日日新聞朝刊掲載)