県の障害者雇用水増し問題 ずさんな手帳確認を適正化へ “長年の慣例”打破、容易ならず [長崎県]

県は、20年以上前から続く「障害者雇用率」の水増しを改める。おざなりだった障害者手帳などの所持確認を徹底するほか、身体障害者に限った職員の採用試験の対象を知的・精神障害者にも拡大する。ただ、この間にも雇用率に関する新たなミスが発覚。長年の慣例を打破するのは容易ではないとみられ、障害者団体も厳しい視線を向けている。

ずさんな「確認作業」

問題の根幹は、ずさんな「確認作業」にある。県は職員から障害者であるとの申告があれば、手帳や診断書の有無を確認することなく、人事課の担当者が「障害者雇用促進法の別表」を参考に判断してきた。別表は、障害の有無や程度を医師が判断する際の目安を示したものだが、医師でもない一般の職員が“代役”を務めていたことになる。

そうして積み重ねた県の本年度の雇用率は、法定の2・5%をわずかに上回り、僅差で「セーフ」の事態は、資料で確認できるだけで8年続く。

そんな慣習は20年以上前に始まったとみられ、2005年に厚生労働省が「手帳か、医師の診断書や意見書が必要」とのガイドラインを定めてからも、改められることはなかった。「ガイドラインを十分に認識しないまま、漫然と判断してきていた」。古川敬三総務部長はそう釈明する。

知的障害者の採用例なし

問題はこれにとどまらない。障害者の社会進出を促すため、厚労省が身体障害者に限って雇用を義務づけたのは1960年。その後、88年には知的障害者、2006年からは精神障害者を雇用した場合にも障害者雇用率に反映されるようになった。

ところが、県が本年度雇用する正規と非正規を合わせた職員数57人の内訳では、56人が「身体」。過去に知的障害者を職員として採用したことはなく、精神障害者も一握りという。

99年度には身体障害者に特化した採用枠を設けたが、現在も、その枠は知的・精神障害者には開かれていない。人事課の担当課長補佐は「身体障害者だと、体のどこが『不自由』なのか同僚職員にも分かりやすく、判断を伴う業務も任せやすい。知的・精神障害者はどのような仕事を担えるか分からず、受け入れ環境を整えられなかった」と話す。

知的・精神の採用見通せず

県は身体障害者限定の採用試験の対象を知的・精神障害者にも広げるよう検討しているが、一般の職員と同じ業務内容をこなさなければならず、どれほど採用できるかは不透明な状況だ。そこで、書類の封筒詰めなど単純な作業を任せる非正規職員として、身体・知的・精神障害者を雇用することも合わせて検討している。

ただ、単純な内容の業務については既に、障害者が働く外部の作業所などに委託しており、たとえ非正規職員でもどれほど採用を増やせるかは不明という。

県教育委員会でも不適切な雇用率の算出が発覚しているが、まだ改善には乗り出しておらず「中央官庁の議論を待って、できるだけ早く検討を始めたい」と、どこか“受け身”だ。

再確認でもミス発覚 8月の公表値を下方修正

障害者雇用率の不適切算出問題を受け、県が厚生労働省の指示に基づき障害者手帳の所持状況などをあらためて確認したところ、知事部局と教育委員会で、問題が発覚した今年8月下旬の公表値をさらに下回った。今月5日に県が発表した。手帳を持たない人を「所持」としていたのが原因。適正化に向けて検討しているさなかの出来事に、障害者団体もあきれている。

県は8月21日、「手帳を持っている」としていた障害者に限って雇用率を計算し、知事部局は本年度の法定値2・5%に対して2・06%、教委は同2・4%に対して1・54%と発表していた。

ところが、8月末に厚労省が全国の自治体に再調査を指示したため、手帳の有無を初めて本人に直接確認したところ、既に手帳を返還したり、もともと持っていなかったりした人もいたという。これによって、知事部局は1・85%、教委は1・45%へとさらに下方修正した。県人事課は「確認があいまいだった」とし、今後は手帳のコピーの提出を求めることにしている。

ただ、過去のデータも誤っている可能性があるものの、国の指示は本年度と昨年度の再調査にとどまっており「さかのぼって調べる予定はない」(県人事課)という。県身体障害者福祉協会連合会の土岐達志会長(70)は「洗いざらい調べないと、本当の改革は不可能だ」と指摘している。

=2018/10/14付 西日本新聞朝刊=

©株式会社西日本新聞社