仮設団地、空洞化進む 熊本地震2年半 7市町村が「集約」検討 孤立化と犯罪防ぐ狙い

熊本地震発生から14日で2年半となる。被災者の生活再建が進む中、熊本県内で仮設団地がある15自治体のうち7市町村が、団地の集約を検討していることが西日本新聞の取材で分かった。退去者が増え、全106団地のうち2割超の24団地で、住宅の半数以上が空室になっていることも判明。集約によって入居者の孤立化を防ぎ、防犯効果を高める狙いがある。

集約を計画する宇城市は、団地6カ所のうち2カ所が市営グラウンドにある。市民から「グラウンドを利用したい」という要望が相次いでおり、市はこの2カ所を優先的に移転し、他の団地と集約したい考え。

甚大な被害が出た南阿蘇村は、対象となる団地を年内に確定し、来年度から集約を進める方針。村内に5カ所、隣接する大津町に3カ所の計8団地あり、村内外でそれぞれ集約するという。村の担当者は「自立再建が進み、防犯対策や被災者が孤立しないことを考慮した」と理由を説明する。

地震の被害が大きかった益城町や、仮設団地が県内最多の21カ所ある御船町など計5町は「集約を検討しているが、具体的な計画は未定」としている。

一方、集約しないと明言しているのは、団地が1カ所の2町を除く6市町村。「引っ越しが被災者の負担になる」(熊本市)、「全ての木造仮設を補強し、被災者の恒久的住まいとして提供する」(氷川町)、「半数以上が入居の延長を希望しており、集約する段階にない」(阿蘇市)-などが理由だった。

大津町は5月、災害公営住宅の建設地を確保する目的で、県内で初めて仮設団地の解体に着手し、6カ所から4カ所に集約した。再集約については「現時点では考えていない」としている。

◇ ◇

■自治会消滅 集会所は閑散 「残る被災者 支援が重要」

「みんな出て行ってさみしくなった。最後の入居者になるかもしれない」。熊本県宇土市の新松原仮設団地に妻と暮らす中村幸男さん(85)はつぶやく。隣近所は空室で、昼下がりでも敷地内に人けはない。

18戸が整備された同団地に残るのは、中村さんを含め2世帯だけ。空室率は9割で、県内の仮設団地106カ所の中で最も高い。取り残される焦りや不安も感じるが、高齢世帯だ。自宅の再建が実現するまでは「とにかく待つしか…」。

熊本地震の被災者の生活再建が進んだことに伴い、仮設団地の入居者はピーク時の約半分になった。入居者の孤立化などを防ぐ手だてが必要になり、県内の7市町村は団地の集約を検討している。

益城町にある櫛島(くしじま)仮設団地の守江勉さん(58)は、団地内の自治会が無くなったことが気になっている。今春、自治会長が退去し、後任のなり手がいなかった。当時、守江さんも打診を受けたが、農業の仕事や被災した自宅のある地区の役員の業務も忙しく断った。

同団地は41戸のうち約半数が空室になった。入居者の交流のため設けられた集会所の利用も、ほとんどない。「入居者が減り、他になり手もいないから仕方ないが、団地内の草取りもできない。住民の自治が必要と感じる」と漏らす。

県は、自宅再建に時間がかかる世帯などの入居期間を再延長する方針を決めた。ただ、再建の道筋を描けない被災者は、空洞化が進む仮設団地に取り残される懸念もある。

自宅再建が難しい入居者を手助けする県の支援員(66)は「手続きが分からず、1人では再建がままならない高齢者もいるし、会いに行っても会えず、孤立化している人もいる」と打ち明ける。

仮設団地に詳しい東北学院大の斉藤康則准教授(地域社会学)は「東日本大震災でも、仮設団地で中心的な役割を担う人ほど再建して退去し、再建困難な人が残された団地を集約しても自治が機能しなかった。時間がたつほど残された入居者への支援が重要になる」と話す。

=2018/10/14付 西日本新聞朝刊=

©株式会社西日本新聞社