社説(10/14):防災・減災 大都市圏の混乱/一極集中の危うさ直視を

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 地震や台風で交通網が乱れると、とたんに拠点駅は人であふれかえる。通勤、帰宅に影響が出て「大混乱」と騒ぎになる。大災害続発のことし夏から秋にかけ、何度も見られた大都市圏のドタバタだ。

 緊急対応が必要な人の救命に関わることもあるから軽視は禁物だが、そうした目先の混乱の回避が災害対応の最優先課題であるかのような指摘や議論はどうだろうか。

 列車の計画運休で影響を受けた人が「迅速な情報提供がなかった」などと不平を漏らすに及んでは危惧が募る。まずは予想される災害を控えた自らの行動や判断の適否を問い直す感覚が求められる。

 人とモノとカネを集中させ、数百万、数千万の人が密集する巨大な生活移動圏を作り上げ、大量輸送と過密ダイヤで利便性を追求し続けるシステムがいかに危ういか。

 相次ぐ「大混乱」があぶり出すのは、そこに暮らす人々の自覚と備えの実情も含めた大都市圏のもろさであり、直視すべきは根本に横たわる一極集中構造の弊になる。

 現政権が災害対応や防災の焦点と強調する国土強靱(きょうじん)化政策は、2014年の基本計画策定時点で「東京一極集中からの脱却、自律・分散・協調型国土の形成」を基本方針の第1項目に掲げていた。

 最悪で死者2万3千人、全壊焼失の建物61万棟、2週間後でも避難者720万人とされる首都直下地震の深刻な被害想定に立てば、当然の戦略だが、当時から具体的なプランは示されなかった。

 並行する地方創生戦略で20年までに首都圏の転入超過を解消させる目標を明記したが、達成にはほど遠い。むしろ転入超過が10万人台で安定推移する状況で、東京五輪の再開発などで膨張に拍車がかかると懸念されている。

 ことし新たに地方就業者・起業家を30万人増やす方針を示したものの、政府機関や企業の地方移転も掛け声倒れのまま、成果は見通せない。

 南海トラフ巨大地震では企業や経済活動が集中する名古屋、大阪圏で甚大な被災が予想され、首都圏も含めた大都市圏の被害はそのまま国難になると指摘されている。

 一極集中の陰で疲弊を極める地方において災害の被害や犠牲がより深刻になる最近の傾向も併せて考えれば、「自律・分散・協調型国土の形成」は地方防災強化の視点からも要請すべきテーマになる。

 規模は異なるが、それは東北や宮城における仙台都市圏の位置付けにも当てはまるだろう。直下の断層地震の被災も想定される中、一極集中構造の危うさを前提にした防災対策や補完機能を担う連携先の必要性は増している。

 短期的な取り組みで一挙解決とはいかない大きな課題だからこそ、先送りは許されない。集中から分散へ。一極集中の是正こそが防災の究極テーマであることを国を挙げて改めて確認する必要がある。