下町探査機 富山湾を撮影 東京海洋大と滑川高海洋科

■滑川沖16日から深海600メートル 東京下町の町工場が開発した低コストで高性能な無人深海探査機「江戸っ子1号」を使った撮影調査が16日から3日間、滑川沖で行われる。東京海洋大と滑川高校海洋科のプロジェクトで、富山湾で江戸っ子1号を使うのは初めて。海面から、ホタルイカが日中に生息するとされる約600メートルの海底までを探る。滑川高の澤田和之教諭(45)は「貴重な映像を収め、深海の魅力を広く伝えたい」と語る。(滑川支局長・小幡雄也) 東京海洋大と滑川高校海洋科は2年前から年1度、滑川沖の深海を撮影している。過去2年はモーター付きの機器を使って深海約400メートルの様子を撮影し、タチウオのすみかやシロエビを捉えた。ただ、機器が水圧に耐え切れず、不具合を起こすことがあった。

 今年はより深い場所の海の生物や環境を撮ろうと、同大が開発に携わった「江戸っ子1号」の活用を決めた。機械音がしないため警戒させることなく、ホタルイカやゲンゲなどの深海魚が撮影できると期待されている。

 県水産研究所や魚津水族館によると、ホタルイカは日中に深海200~600メートル、夜はより浅い範囲にすむとされる。産卵期を迎える春の夜間はダイビングなどで目にすることができるが、春以外の季節の日中に深海で泳ぐ姿を収めた映像は珍しい。同館の稲村修館長は「もし生物が写らなくても、海面から深海までの景色の移り変わりや季節による違いなどは興味深く、ロマンのある調査だ」と話す。

 調査は滑川漁港の沖合3~5キロの2地点で行う。滑川高によると、今回の調査水域は他の機関の撮影実績がほぼないという。海洋科3年の生徒をはじめ、同大教授、関係企業の社員らが参加。滑川高の実習船からロープで江戸っ子1号を投入、回収する。海洋科の青木豪さん(18)は「深海の様子は見たことがないので楽しみ」と期待する。

 水深500メートル以下の海の地形は月面以上に解明されていないと言われるほど謎に包まれた世界で、研究機関に偏っている深海調査の裾野を広げるのも目的の一つだ。同大の清水悦郎教授(46)=制御工学=は「生態系が特殊な富山湾の深海の様子や生物を映像に収めて広め、調査が進むきっかけにしたい。海について学ぶ若者にも少しでも興味を持ってほしい」と話している。◆江戸っ子1号◆ 東京下町の中小企業や国の研究機関、大学などがタッグを組み、2013年に開発された深海探査機。耐圧性の高い直径33センチのガラス球4個を縦に並べた構造で、全長約160センチ、幅約50センチ、重さ約50キロ。市販の3Dビデオカメラや照明などが入っている。重りで自然に落下し、音波信号を受け取ると重りが切り離されて浮き上がる仕組みで、機械音を発しない。水深最大約1万1千メートルまでの水圧に耐えられ、13年には日本海溝の約8千メートルの深海魚を高画質で撮影することに成功、実用化された。

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