【社説】新聞週間 事実追求、公文書からも

 あすから71回目の新聞週間が始まる。ネットを中心に世界的にフェイクニュースや一方的な情報が氾濫する中、報道の役割や使命としてあらためて強調されるのが、事実の追求である。国民の知りたいという思いに応えてこそ、報道機関として信頼が得られると私たちは考える。

 その事実の追求のすべを危うくするような問題が、ことし相次いで起きた。安倍政権での公文書を巡る不祥事である。

 国有地を不当に安く売却した森友学園問題では、財務省による決裁文書の改ざんが明らかになった。政治家側から照会があった事実を削除していた。陸上自衛隊のイラク派遣部隊の日報は「存在しない」と説明していたが、1年以上過ぎて約1万5千ページ近い文書を公表した。

 公文書は、国民共有の財産である。それがないがしろにされ、政策決定のプロセスが不透明にされたり、隠蔽(いんぺい)されたりした。官僚は情報を独占し、時にごまかそうとさえする。これらは、まさに権力の暴走につながりかねない。

 政府は先月、各省庁の公文書管理状況を監視する「公文書監察室」を内閣府に置いたが、形だけの再発防止対策になってはいないか。きちんと機能していくのか、目を光らせたい。

 後になって政策決定のプロセスを検証できてこそ、民主主義は機能する。公文書は、いわば行政の公平性を確認する主柱でもある。ゆえに報道機関としてもしっかりとチェックしていく必要がある。

 さらに、公文書には埋もれた事実を掘り起こす役割もある。

 旧優生保護法を巡り、知的障害などを理由に本人同意がないまま不妊手術を施された被害者が救済されることになった。最初に報じた毎日新聞をはじめ各メディアがこの問題を取り上げ続けたことが実現につながったが、32都道府県で約5千人分の資料が現存していたことも大きかったと言えよう。

 9月下旬に札幌市で開かれたマスコミ倫理懇談会の全国大会では、公文書管理や情報公開の在り方と報道機関の役割がテーマの一つになった。

 専門家からは、取材手法が、内情を知る関係者から情報を引き出すことで真相に迫るパターンに偏っているのではないかとの指摘があった。それとともに、国や自治体の情報公開制度を活用して、行政運営の妥当性や公平性をチェックする役割を担ってほしいとの提言があった。しっかりと受け止めたい。

 情報公開制度の重みを感じた一件がある。各メディアが競って報じた自衛隊の日報問題の糸口は、ジャーナリスト布施祐仁氏による開示請求だった。

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報の公開を求めると、防衛省から「不存在」との回答があり、隠蔽問題に火がついた。選挙応援などで物議を醸しながら続投していた稲田朋美防衛相(当時)も、ついに辞任に追い込まれた。

 ことしの新聞週間の代表標語には「真実と 人に寄り添う 記事がある」が選ばれた。徹底した情報公開を迫る報道は、公権力の過剰な秘密主義にくさびを打ち込み、緊張関係を生み出す。それこそが読者が求めるメディアの姿だと感じる。公文書をいっそう活用し、権力をチェックする報道を果たしていく。

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