『アジアのダイナミズムと沖縄の発展』 沖縄の自立 具体的に提示

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 我々は、個人主義化と孤立、自治会等のコミュニティーの弱体化とともに「格差と差別の問題」に直面している。私が2013年から約3年間滞在したパキスタンでも実感したことであり、沖縄、日本をふくむ地球社会が抱える課題であるように思う。

 私は職業柄、開発途上地域の国々が、自国のより良い未来づくりのために「国家開発計画」というビジョンを策定する現場に身を置いてきた。16年2月に沖縄に着任してまず驚いたことは、「沖縄21世紀ビジョン」(以下「21世紀ビジョン」)の存在であった。海外の国レベルのビジョンに比べても秀逸な内容に強い衝撃を覚えた。特に地球社会が直面する課題への処方箋も盛り込まれていると感じた。

 富川盛武氏の本書は、21世紀ビジョンの基本理念(時代を切り拓(ひら)き世界と交流し、ともに支え合う平和で豊かな『美ら島』を創造する)を真に具現化するものだと思う。沖縄がもつ「ソフトパワー」を魅力的に解説しながら、沖縄の「自立」の姿と日本の発展を牽引(けんいん)する沖縄の「役割」を具体的に描いている。県外の日本人はもちろん、ここ数年急激に外国人観光客が増加している背景には、沖縄文化「健康・長寿、安全・安心、快適・環境というソフトパワー」があると見てよいのではないか。

 「沖縄の自立」に向けては21世紀ビジョンを経済面で掘り下げた「沖縄県アジア経済戦略構想」があるが、私は、JICA沖縄が支援する「環境・エネルギー産業」の分野で、沖縄の中小企業等の技術と知見をアジアなどに浸透させる協力で、まさにアジアのダイナミズムを地元経済に取り込む動きを実感している。

 また、日本の中で沖縄が果たす「役割」について、私は筆者の次のメッセージに強い共感を覚える。「沖縄はそのソフトパワーにより、高次元のニーズに対応し先進国を更に発展(ポスト先進国)させる力をもつ」

 「ポスト先進国」の姿が「人間尊重と共生の社会」であることを願う者は私だけではないと信じたい。そんな社会づくりを目指して、著者が本書を通じて、アジアのダイナミズムを見据え、ソフトとハードのインフラ整備を具体的に提案してくれているように私は思う。

 (河崎充良・沖縄国際センター所長)

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 とみかわ・もりたけ 1948年北谷町出身。経済学者。沖縄国際大学学長を経て2017年から県副知事。沖縄経済論などで著書多数。県の審議会で沖縄の振興計画「21世紀ビジョン」や「県アジア経済戦略構想」を取りまとめた。

 
アジアのダイナミズムと沖縄の発展 富川盛武 著
A5判 343頁

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