「描く力」熊日大賞・松永さん 光の表現「限界挑む」

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 高森町の公募展の搬入を済ませ、休憩がてら寄ったコンビニエンスストアの駐車場で受賞を聞いた。「うそでしょう」。それから自宅がある熊本市への帰り道、妻の裕子さん(33)が運転する隣で涙が止まらなかった。「描く力」への応募は連続5回目、これまで入選どまりだった。

 大賞になった油絵「草原」は、真っ白な背景に牛の親子が寄り添う姿を描いた。奥から差す光で、2頭の影がくっきりと浮かぶ。

 実はこの牛、モデルはフィギュア。机に並べて後ろからライトを当てた。ほかの動物の人形もあるが「僕は丑[うし]年だし、牛乳も好きだから」と笑う。

 小学5年生の写生大会で花を描いた。だれも褒めてくれなかったが「うまいな」と自画自賛して、絵の楽しさを覚えた。市内の高校を卒業後、ファッションデザイナーになる夢を追いかけて東京と熊本を行ったり来たり。途中「服より絵が好きだ」と気付き、夢は「画家」に変わった。

 5年前から始めた油絵は我流。よく使う5センチと10センチのペインティングナイフで、まるで左官のように絵の具を厚塗りしていく。ビール瓶や果物、洗剤のボトルなど身の周りのものを描くのは「絵を身近なものにしたい」との思いからだ。

 描き続けることで「周囲への感謝の気持ちが大きくなる」という。油絵を始めてからそっていないというひげがチャームポイント。市営団地の自宅兼アトリエは画材のにおいでいっぱいだが「ぜいたくはいらない。いま十分に幸せです」。33歳。(飛松佐和子)

色重ね花びら「ふわっと」 ふるさと賞の村上さん

村上章さんの日本画「山里の春」

 村上さんは元警察官で、退職後に日本画教室に通い始めた。「描く力」への応募は2回目で、前回は入選。「入選したらいいなと思っていたが、まさかふるさと賞とは思わなかった。夢のようだ」と喜ぶ。

 受賞作は、あさぎり町の茶畑に立つ一本桜「遠山桜」を題材にした。新聞で知り、現地に見に行ったのは2016年春。「すぐに描いてみたい」と思ったが、熊本地震が発生。半年間ほど制作できず、その後「完成に2年かかった」という。

 画面いっぱいに桜を描いたのは「見る人に春を感じてほしいから」。桜の花びらは細い筆で何度も色を重ね、「ふわっとした感じを出したかった」。茶畑と山の緑色の違いを出すのに苦心したという。

 山登りも趣味で「山に行けばほっとする。今後も風景画を描いていきたい」と語る。(西島宏美)

入賞・入選者名簿(敬称略)

【グランプリ部門】
◇熊日大賞 草原(油彩)松永健志(33)=熊本市
◇草薙奈津子賞 吾輩の道(油彩)遠坂昇(78)=同
◇篠雅廣賞 積日(アクリル)田中恵津子(61)=同
◇日比野克彦賞 壁画に想うⅡ(水彩)瀬口忠一(78)=山鹿市
◇米田耕司賞 色即是空(ペン画)松村亘(71)=熊本市
◇入選 南洋子、江崎澄男、星子悦郎、久原知子、宮中千秋、高山法雄、石塚鮎子、佐藤美代子、秋本八千代、菊本光江、宮脇定久、本田崇、橋本以蔵、井福加代子、福島房雄、河原律子、杉村喜久江、大森キミ子、澤村武山、木寺渡、福原※彦、原田節子、宮本靖子、宮島久美子、辻本又慶、浦上光喜、井島秀夫、内田葉子、黒木幹子、神田三恵子、右田洋一郎、中島知宏、木村登美子、松本りえ、石田澄男、本山正喜、上川桂南恵、松下佐代、井上あや、鈴木沙彩、岩川知子、石井小夜子、清原※彦、内田千賀子、坂本隆夫、白浜祐逸、上村順渕、隈河恵、廣松幸誠、稗田健揮

【ふるさと部門】
◇ふるさと賞 山里の春(日本画)村上章(68)=宇城市
◇特選1席・東宝ホーム賞 肥後長浜海岸の一日(油彩)小山寛誠(62)=山鹿市
◇特選2席 南郷谷秋景(油彩)関英輝(80)=阿蘇市
◇特選3席 華(油彩)大江ミサコ(68)=熊本市
◇入選 小島憲二郎、徳田純子、山下多惠子、有働恭子、小崎春一、工藤勇二、木下睦夫、田中佐和子、藤井正範、北山明美、角軍亀、松村誠也、大田康雄、前田文代、伊藤由美子、福島まり子、永田忠孝、佃千世、神西京子、芹川孝弘、大橋福子、鬼塚信子、船山文子、大野和美、遠藤美穂子、森野香澄、岩下元行、上村省三、中村好宏、井上昌子

※は邦の一番上がつき出ていない

(2018年10月14日付 熊本日日新聞朝刊掲載)