「一芸に秀でる者は多芸に通ず」という言葉がある。
これはどんな職業であれ“その道”を極めることができる人間は、どんな世界に身を置くことになってもやはり頂に通じる道を見つけ出すであろうという意味として使われている。
この言葉が的を射てるかどうかは議論のあるところだが、今回は一流の選手でありながら「別の職業に転職しても成功を収めそうなサッカー選手」をご紹介しよう。
エディン・ジェコ(ローマ)
ローマとボスニア・ヘルツェゴビナ代表のエースとして活躍するFWは、勉学の才能にも恵まれている。
先月、通信教育で3年間在籍した母国の名門サラエボ大学体育学部を卒業。学業の面でも優秀な“点取り屋”であることを示した。
そんなジェコの転職先には「クラブのフロント」をお勧めしたい。
多国籍軍と化す昨今のサッカー界においては、言語も重要な要素。これまで様々なリーグを渡り歩き、ボスニア語、チェコ語、ドイツ語、英語、イタリア語を操る彼なら世界中の選手とコミュニケーションが取れるはずだ。
また、大学ではスポーツマネジメントを専攻しており、クラブを発展的に成長させるビジョンも備わっていることだろう。
現在でもハイパフォーマンスを維持しているためすぐに転職する必要はないが、そう遠くない未来に幹部クラスとして世界を股にかける彼の姿が見られるかもしれない。
ハンネス・ハルドウルソン(カラバフ)
アゼルバイジャンのカラバフに所属する34歳のGK。ロシア・ワールドカップのアルゼンチン戦でメッシのPKを止めた際は“時の人”となった。
そんな彼はもう一つの職業でも有名である。それは高校生の頃からやっている「映像作家」。
というのも、ハルドウルソンがプロ選手になったのは実は2014年のことで、それまでは生計を立てるために仕事とサッカーを両立し、20歳の時にはサッカーを止めるかどうかの岐路にも立たされていたのだという。
成功を勝ち取った現在はサッカーに専念しているが、今でも映画を撮る夢があるんだとか。「サッカー選手の目線」で作られた映画がどんなものになるのかぜひ見てみたい。
ジャンルイージ・ブッフォン(PSG)
言わずと知れたレジェンド。今夏40歳にして初めてイタリアを離れPSGに加入したGKは、プレーヤーとしてだけでなく人として尊敬できる人物である。
そんな尊敬される人間がなるべきものはリーダーであり、私が勧めるのは「大統領」だ。
ブッフォンはイタリア代表やユヴェントスでキャプテンを務めてきたが、もっと大きな規模でリーダーになってもいい。彼にはそれくらい人望がある。
代表戦でフランス国歌に対するブーイングを止めたり、ユーヴェがセリエBに落ちた時には、多くの選手が移籍するなか恩返しとしてチームに残留するなど“聖人君子”ぶりを発揮してきた。
かつて同じセリエAで活躍したジョージ・ウェアはリベリアの大統領に、カハ・カラーゼはグルジアの首都トビリシで市長を務めており、決して夢物語ではない。
彼のような人物が国のトップになれば国民は一つになり、さらには平和な世界が実現するのではないだろうか。
クラウディオ・マルキージオ(ゼニト)
今季、25年過ごしたユヴェントスを離れてロシアのゼニトに移籍したマルキージオ。
ユーヴェでプリンチピーノ(小さな王子様)と呼ばれ愛されてきた32歳のMFは、選手としての実力もさることながら、そのルックスも憧れの的であった。
そんな彼にやってほしいのはもちろん「モデル」。
サッカー界の“イケメン”というと、日本のメディアなどではクリスティアーノ・ロナウドやハメス・ロドリゲスなどがたびたび取り上げられている。
しかしマルキージオは、サッカー選手に詳しい人たちから「別格だ」との声が上がり、“イケメン”という今時の言葉では言い表せないほどの高貴にして端正な顔の持ち主である。
既にちょっとそれらしい活動はしているが、本格的に取り組むようになればきっと世界のトップモデルになれるだろう。
ヘセ・ロドリゲス(PSG)
レアル・マドリーの下部組織で育成され、“ラウールの後継者”とも言われたヘセ。
アンチェロッティやペレス会長から絶賛され、マドリーの英雄になると思われていた天才アタッカーは現在PSGにいる。
昨シーズンはストーク・シティにレンタルで出されるが、リザーブチームに落とされるなど活躍できずフランスへ戻ってきたのだ。
そんなヘセに勧めたいのは「ミュージシャン」。すでにJey-Mとしてデビューしているが、音楽活動をしている時の彼はとても“いきいき”している。
今はとても不安定な状況にある。だからこそ思い切って一度完全にミュージシャンに転向し、リフレッシュしてからサッカー界に復帰してみるのもいいのではないだろうか。
天才は死なないはずだ。