<東北の本棚>原発被災地 鎮魂の30編

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◎詩集「望郷の祈り」 斎藤和子 著

 舞台は福島県浜通り、東日本大震災で起きた福島第1原発事故の被災地である。浪江町出身の著者が、被災体験や故郷への追憶と鎮魂を30編の詩につづった。

 原発事故発生の時、南相馬市の自宅にいた。着のみ着のままで、長男のいる仙台へ夫婦で避難。<水も土も命に繋(つな)がる自然が汚染された><瓦礫(がれき)を越えて北へ走る>。「身に付けていたのは『言葉』だけだった」と言う。

 実家は相馬焼の窯元が並ぶ浪江町の大堀地区。そこは放射線量が高く、帰還困難地域に指定された。<この地から消える宿命を背負って/疲弊したわたしの亡骸(なきがら)は何処に果てるか>

 4カ月後、南相馬市の自宅に戻る。「詩にどんな力があるのか」。同市の死者1042人、その数字を前にふと疑問が湧く。しかし「書くことこそ自分が生きていることの証し」と思い直す。自分とは何か、心象風景の中に、ルーツをたどる。明治時代、寺子屋で学んだ曽祖母、仙台の専門学校で学んだ祖母、母親は著者が3歳の時に病死した。娘は、幼い頃から読書に明け暮れる。相馬野馬追の出陣風景、サケの上る請戸川。幼い時に見たふるさとの風景を思い起こすことが、著者にとっての鎮魂の祈りであった。1942年生まれ。元高校教師。福島県現代詩人会理事。

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