父と子 影響未解明 募る不安  カネミ油症次世代の今・6

「遺伝子などの異変調べて」

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 カネミ油症患者の子や孫の健康被害を巡り、原因物質ダイオキシン類が母の胎盤や母乳から子に移行することは指摘されてきた。一方、父親から子への影響は未解明で、“関連はない”との見方もある。だが五島市出身の父(65)が油症患者だと2年前に知った大分県在住の近藤誠司(40)=仮名=は、自らに起きる数々の「異変」を油症と結び付けずにはいられない。
 誠司は抱えてきた病気が多い。幼少期は何度もひきつけを起こし、病院に運ばれた。中学時代から腹を下しやすく、休み時間のたびにトイレへ駆け込んだ。頭痛にも悩み、胃腸の疾患や多汗症は今も続くが、原因ははっきりしない。
 父は、五島から山口県の高校に進学した際、島を離れたが、帰省時に実家で原因の米ぬか油を食べ、油症認定された。誠司がその事実を知ったのは、皮膚に内出血が起こる「紫斑病」と闘病中の2016年。前年に重症化し胃腸から出血。寝たきりの生活を強いられた。あまりにも体の不調が続き、「わらにもすがる思い」で先祖の墓に手を合わせようと五島を訪れ、祖母(88)の家に立ち寄った。
 「カネミ油症の影響じゃなかね」。衰弱した姿に、祖母は恐る恐る誠司の父が認定患者であることを明かした。「父も負い目があり言えなかったのでは」と誠司は推し量る。
 同年、長崎市で油症検診を受けたが認定はされなかった。「少しほっとしたが、全く関係がないというのは納得いかない」。その後、次の検診日程などを知らせる連絡もなく、「切り捨てられた気持ち」だ。
 誠司は漢方、はり、整体など東洋医学を中心にあらゆる治療法を試す。しかし効果は確実でない上、保険が利かないものもあり、医療費は月に2万円以上。体調が悪く仕事が手に付かない日も多く、医療費は家計に重くのしかかる。
 体を心配する妻に、油症に関する話は一切していない。「認定されれば話すつもりだが…」。影響があるのかないのか分からない“中途半端”な立場に戸惑う。妻は子づくりを望んでいるが、誠司は「自分と同じだとかわいそう」とためらう。妻に相談できず、他の患者や支援団体ともつながれない孤独。「油症との関連はゼロではないはず。遺伝子などの異変まで調べてほしい」と、振り絞るように語った。
 未認定患者の自主検診や水俣病患者の支援に長年取り組む水俣協立病院(熊本県)の藤野糺(ただし)名誉院長は「父親から子への影響に関する調査は残された課題。特に内科的症状は見えにくく、注目されない現状もある。認定患者の父親とその子にどんな症状が出ているのか、家族単位での詳しい聞き取りがまず必要だ」と指摘する。

「本当に父親からの油症の影響はないのか」。誠司(仮名)は孤独の中で不安を募らせる(写真はイメージ)