佐世保と安全保障 水陸機動団新編へ・2 日米の狙い 中国念頭に抑止力向上

 陸上自衛隊に水陸機動団を発足させる背景には、南西諸島周辺での中国による海洋進出がある。
 沖縄県・尖閣諸島周辺では中国公船の領海侵入が続発。1月には接続水域を潜水艦が潜航しているのが確認された。海自関係者も「これまでになかった動き」と警戒を強める。
 こうした中、米海軍佐世保基地に1月、強襲揚陸艦「ワスプ」(4万532トン)が配備された。全長約250メートル。海兵隊員約1600人を乗せることができる。西太平洋とインド洋を管轄する米海軍第7艦隊で唯一、F35B最新鋭ステルス戦闘機を艦載機として運用。偵察能力の向上に伴い、海兵隊の展開力はさらに強化される。
 離島防衛が専門の陸自水陸機動団と、そのモデルとなる米海兵隊の重要な輸送手段が佐世保に“同居”する格好。拓殖大海外事情研究所の川上高司所長(安全保障論)は「陸自と米海兵隊を一体化させ、抑止力を高める狙いがある。佐世保は最前線の基地の一つになる」と指摘する。
 海自と空自は米軍との連携を深めており、残るは陸自だけだった。部隊の構想は以前からあったという。中国の海洋進出に加え、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の問題は自衛隊だけでは対応できない。「米軍と自衛隊が一緒に行動することは、安全保障に関する日米の国益が一致した結果」と分析する。
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 侵攻を受けた離島までは、海と空からさまざまな手段で隊員を輸送することが必要になる。このため水陸機動団は、陸海空の統合運用が鍵を握る。
 海自の菊地聡佐世保地方総監は、司令部機能を持つ護衛艦「いせ」などとの協力態勢を想定。「近くに部隊ができることで、連携が密になる。共同訓練を通じ互いの能力を高められるはずだ」と期待感を示す。
 水陸機動団は同時に立ち上がる陸上総隊の直轄部隊となる見通し。陸海空で速やかな連携が取れるようになり、米軍との調整もしやすくなる見方がある。
 2015年から2年間、陸自相浦駐屯地司令を務めた元陸将補の杉本嘉章氏は「陸海がつながりを深め、新たな南西諸島防衛の拠点がおおむね確立される。指揮命令系統が明確になり、現在の西部方面普通科連隊より部隊は動きやすくなる。隊員が増え、注目度も高まり、佐世保の存在意義は大きく変わる」と力を込めた。

佐世保に配備された米海軍の強襲揚陸艦ワスプ=1月14日午前9時16分、佐世保港

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