【日鉄住金物産発足5周年 日鉄住金物産・宮本常夫副社長インタビュー】〈鉄鋼と高機能材料のシナジー発揮〉「車向け材料を総合提案」 国内効率化、海外は拡大展開

――宮本副社長は鉄鋼事業本部と産機・インフラ事業を統括。前3月期は全社連結経常利益351億円のうち、鉄鋼事業が253億円、産機・インフラ事業が37億円でした。まずは鉄鋼事業の現状から。

 「鉄鋼事業は、2013年10月の旧2社統合後の初年度である2014年度と比較すると、売上高は横ばいで経常利益が206億円から253億円に増えている。これは主にグループ会社の収益改善によるところが大きい」

 「赤字の子会社は17年度に実質的には国内2社、海外1社の計3社。この3社も今18年度中には目途がついて、グループ会社が全社黒字体質になる見通しだ。今年度で鉄鋼事業の基盤を確立することができ、成長戦略に転換するステージとなる」

――このほど策定した新中期経営計画(18~20年度)では、全社経常利益を440億円に拡大し、そのうち鉄鋼事業で全社の7割強、315億円を確保する計画に。

 「取扱数量を17年度の1655万トン(連結ベース)から2400万トンに拡大し、その半分の1200万トンを海外とする計画だ」

――700~800万トンの数量拡大を、どう達成しますか。

 「三井物産から今年の4月1日に移管を受けた分が400万トン。さらにどう増やすかだが、鉄鋼事業本部の海外拠点は19カ国70拠点あり、中国、東南アジアで先行展開してきた。三井物産は65カ国125拠点を持ち、北米、欧州、インド、ロシアなどでも幅広いネットワークを持つ。三井物産グループの持つアセット(事業資産)を活用し、海外拠点の拡充を図りながら数量増を狙う」

――鉄鋼事業の今後の方針について。

 「主に3つで、(1)国内の最適化・効率化、(2)海外の拡大展開、(3)新需要・新技術でのサプライチェーン構築」

――国内の効率化・最適化とは。

 「商社、CCなど流通加工の効率化に継続して取り組む。地域ごと、分野ごとに最適な形を構築したい」

――新需要、新技術とは。

 「産機・インフラ部門のなかに高機能材料部という部組織を構えており、自動車のマルチマテリアル化に対応している。アルミ、炭素繊維、樹脂などを扱い、需要家ニーズが強いため徐々に取扱いが増えている。EVの電池向けのアルミ材も増えている。鉄を核としながら、ユーザーニーズに対応してそれ以外の素材も含め、材料の総合提案を進める。高機能材料部と鉄鋼企画部、自動車企画部のオフィスを近くに配置し、連携が取りやすい形とした。総合力を発揮したい」

 「新需要や新技術では電池、車載モーター、半導体、ロボット、センサーの5つに注目している。これらのサプライチェーンに既に入れている部分もあるが、バリューチェーンの中に組み込んでもらえるための機能を発揮し、チェーンを回す原動力の一つになりたい。地域的には特に中国でこうした新分野の展開が早い。スピード感を持って取り組む」

――話の出た新技術対応が産機・インフラの成長戦略の一つに?

 「工業団地展開と合わせ、アルミなど高機能材料による自動車軽量化対応が一つのカギになる。グローバル・ニッチトップを目指す」

――最先端ITC(IT技術)の有効活用について。

 「RPAを導入して事務作業の効率化を推進しているが、加工拠点など製造現場にもAIを積極的に導入し、設備対策を行っていく」

 「メーカー商社の強みを活かし、技術系人材がグループ全体で50人程度在籍しており、操業改善、安全対策、品質対応や設備対策に携わっている」

――4月に、商権とともに三井物産から約190人が移籍しました。株式移管はNSMコイルセンター、三鋼販、電機資材の3社が主たる対象です。

 「国内最適化や海外展開強化を進める中で、意味がある資本政策(株式取得)を今後も行う方針だ。三井物産以外の企業とも実施する可能性はあるが、優先順位としては三井グループが第一になる」(一柳 朋紀)

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