送還寸前に乗客が守ったソマリア人、少女集団暴行の犯歴明らかに

By 太田清

 

ロンドンのヒースロー空港=2014年12月(ロイター=共同)

 ロンドンのヒースロー空港から強制送還されそうになったソマリア人男性を、乗客らが人道的理由から阻止した話が英国で美談として報じられたが、この男性は過去に16歳の少女に対する集団暴行で確定判決を受け服役後に送還命令を受けていたことが15日までに明らかになった。英大衆紙の電子版メール・オンラインなどが報じた。 

 英国では「警察は国外退去を妨害する乗客らに毅然な態度をとるべきだった」と乗客とともに警察を批判する声が上がっている。 

 男性はヤクブ・アフメド元受刑者(29)で今月9日、送還のためトルコ・イスタンブール行きの航空機に乗せられた際に「家族から引き離される」と泣き叫び助けを求めた。これに対し、十数人の乗客が「飛行機から降ろしてやれ」などと騒ぎ出したため、同行していた係官らはやむを得ず元受刑者とともに機体から降りる羽目に。乗客らに感謝の意を示した元受刑者に対し、乗客らは拍手喝采してこれに応じた。メール・オンラインは乗客が撮影したとみられるビデオ映像も公開した。 

 しかし、紛争地ソマリアから難民として英国に来ていた元受刑者は2007年8月、ロンドン市内で16歳の少女を友人が待っていると誘い出し、他の3人とともに暴行した経歴があることが判明。当初は犯行を否認したが、DNA型の分析などから禁錮9年の有罪判決を受けていた。 

 4年あまりで出所したものの、英内務省は「重大犯罪」の経歴があることを理由に送還を命令。元受刑者は現在、移民収容センターにいるとみられるが、内務当局は近く再び送還手続きを取る方針。 

 英国の犯罪被害者支援団体の代表は「この送還は公益にかなっている」と主張。一方、内務省広報担当者は「わが国のもてなしに対し、犯罪で応える外国人は疑いなく強制送還の対象となる。2010年以降、43000人以上を国外退去させてきた」と話している。 

 今年7月にも、スウェーデンの空港で、亡命申請していたアフガニスタン人男性の強制送還に反対するスウェーデン人の女性活動家が、男性の乗った航空機内で着席を拒否し、男性を降ろすよう要求。航空当局は求めに応じ男性の送還を中止し降機させる騒ぎがあった。 (共同通信=太田清)

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