キーワードは『環境』か!?日本の育成年代の課題を考察

ジュニア年代の技術は世界でもトップクラスと言われる我が国日本。そんな日本の 育成年代の課題を考察!

技術は世界でもトップクラスの日本の育成年代

以前、スペイン人の指導者とスペインで指導する日本人の指導者に話しを聞く機会があった。それぞれに日本の育成年代に関する質問をいくつかぶつけた。

その中で日本とスペインの育成年代のレベルについて聞くと、スペイン人指導者はこう答えた「「日本人の子ども達の技術は世界でもトップクラスのものを持っていて、スペイン人に勝るレベルだと思う。しかし、スペイン人の子どもより明らかに劣るのは、創造性だ」

同指導者は、「スペインでは、練習メニューに子ども達が自身で考えてプレーしなければ上手くいかない要素が組み込まれている。だから、自然に自分達で考えてアイディアを出すことができる環境がある。しかし、日本の子ども達はコーチに言われたことしかできないことが多い。コーチに言われたこと+αで創造性あふれるプレーを見せる点ではスペインの子どものほうが圧倒的に優れている」と語った。日本人はテクニックは世界でもトップクラスだが、創造性の部分ではまだ課題が残るようだ。

海外から育成を学ぶ日本 問題なのは学びを生かす『環境』

次に、スペインで指導する日本人指導者に日本サッカーの育成年代における課題を聞いてみた。すると「最近は、多くの指導者が海外に行ったり、海外の優秀な指導者を呼んで指導者講習会をやって、インプットはできている。しかし、まだまだアウトプットできる実戦経験を積める場が少ない」と答えてくれた。スペインでは、育成年代から同国のトップリーグであるリーガエスパニョーラのように1部リーグから2部、3部、その下とリーグ戦が行われ、シーズン中は毎週公式戦があるという。

しかし今の日本では、小学生年代の日本1を決めるJFA全日本U-12サッカー選手権大会(全日本少年大会)をはじめ、多くの大会は予選リーグ以外はトーナメント戦である。最近でこそ、年間を通して行われるリーグ戦が首都圏を中心に行われてはいるものの、まだまだスペインのような構造にはなっていない。

サッカーは「試合感」と呼ばれる試合でしか感じられない要素が大きいスポーツである。そのため、日頃から実戦経験を多く積むことこそが、子ども達の成長につながることが考えられる。

トーナメント戦になると負けたら敗退の一発勝負。緊張感を持たせる意味では良いのかもしれないが、そうなると決勝に進んだチームと1回戦などで敗退したチームとでは、試合数に圧倒的な差が出る。年間を通して、平等に試合で実践経験を積む環境が整っているスペインに比べ、日本はまだまだチームによって試合数の差が出てきてしまう環境におかれている。

指導者の学ぶ環境が不足している日本

日本には、少年団や中学校の部活動などのボランティアコーチ、副業コーチ、サッカーを教えてることを生業とするプロコーチと様々な形で指導する指導者達がいる。それらの指導者たちは現場の指導以外でサッカーの戦術や指導をどのように学んでいるのだろうか。

多くの指導者は日本サッカー協会などが主催する「指導者講習会」に参加したり、動画コンテンツや自分で試合会場に足を運ぶことで指導を学んでいる。海外研修や留学で海外から学ぶ方法もあるが、時間もお金もかかり、現場の指導からも一定期間離れることになるためあまり現実的ではない。

現場での指導以外で学ぶ環境が極めて少ない状況がある。そして、「指導者養成機関」など指導者を育てる組織がJFA(日本サッカー協会)以外でほとんどないのも問題として挙げられる。育成に定評があるスペインではコーチングスクールといった指導者が学ぶ環境が用意されていて、平日6時間を座学と指導実践に充てられ、週に5日間みっちりとそれをこなすという。

これらのコーチングスクールではもちろん現場での指導実践も行われており、理論と実践経験を身につけた指導者がそれぞれのクラブで指導している。日本も選手の育成をするための「指導者の育成」が必要不可欠であり、そのためにはこのような指導者を育成する機関が必要となってくる。

今後、指導環境が改善され、日本サッカー全体のレベルアップに期待したい。

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