【素材技術で新市場に挑む シリーズ「EV化」企業編(6)】〈住友金属鉱山〉二次電池正極材料、資源から一貫生産

廃電池から希少資源回収も

©株式会社鉄鋼新聞社

 住友金属鉱山は、電気自動車(EV)などに搭載される二次電池用正極材料事業を急速に拡大させている。原料となるニッケルとコバルトの資源開発から製錬、正極材の製造までを一貫体制で生産するのは世界でも同社だけで、世界的に競争優位性のある製造プロセスを確立している。トヨタ自動車、パナソニックといった大手需要家との長年にわたる連携も競争優位性を高める一助となっている。

 住友金属鉱山の車載用電池材料事業は、トヨタの初代プリウスに搭載されたニッケル水素電池用正極材(水酸化ニッケル)の供給が端緒で、長い歴史を有する。現在主力のニッケル酸リチウム(NCA)はパナソニックと共同開発した正極材で、米テスラのEV用リチウムイオン電池(LiB)に採用されている。

 NCAは2013年に月産能力300トン体制でスタートしたが、続けざまに増強投資を実施し、18年末までに同4550トン体制が完成する。

 急速な事業拡大を支えるのは資源、製錬、材料という3事業連携のユニークなビジネスモデルだ。上流の資源では権益を有するフィリピンの鉱山などから希少金属のニッケルとコバルトを安定確保し、顧客に安心感のある供給体制を構築。中流の製錬では世界的にコスト競争力が高いHPAL法、MCLE法という二つのプロセスを有する強みを生かす。

 さらに中流の製錬と下流の材料が直結する住友金属鉱山ならではの事業構造が正極材の品質を高める大きな利点となる。

 正極材の主力製造工場は、同社ニッケル工場の近隣に位置するため、原料の硫酸ニッケルを液状のまま運搬できる。正極材の製造は通常、結晶化した硫酸ニッケルを溶かす工程が必要になるため、大きなコストメリットがある。

 加えて硫酸ニッケルを製造する播磨事業所でもプリカーサーを作る工程まで一貫ラインを構築するなど、プロセスの進化は現在進行形だ。

 昨年には廃LiBなどから銅とニッケルを再資源化する技術も確立。コバルトの回収に向けた実証も進める。さらなる競争力強化と希少資源の安定確保につなげる構えだ。