五島を「ドローンの島」に 物流、農業に活用へ 五島市が関連企業誘致 新産業創出も

 長崎県五島市は本年度から、小型無人機ドローンの関連企業を誘致し、物流や農業などさまざまな分野で新たなドローン産業の創出を目指すプロジェクトを始めた。市内の有人島に自律飛行の実証実験などができる環境を整え、「ドローンの島」として関連産業の集積を図る。島民の利便性向上や雇用創出につなげたい考えだ。
 事業名は「ドローンi-Landプロジェクト」。国の地方創生推進交付金を活用し、2022年度までの5カ年計画で取り組む。総事業費は約1億4千万円の見込み。
 ドローンは従来、操縦者が機体を視認できる状態でしか飛ばせなかった。国は今年から、人の少ない離島や山間部に限り「目視外飛行」を解禁する方針で、年内に荷物配送の実現を目指している。
 こうした動きを受け、市は本年度からドローン専従の地域おこし協力隊員を配置。9月にはドローン関連企業が集う「日本ドローンコンソーシアム」に加盟し、メーカーなどとの連携や情報交換に務めてきた。市内ではまず、交付金を活用した事業として▽離島間物流▽農地の作付け状況の確認▽海洋漂着ごみ調査▽洋上風車など再生可能エネルギー施設の点検-の4分野に取り組む。
 このうち物流分野では将来的に市内の二次離島間で薬や郵便物などを輸送する想定。目視外飛行を行うには機体周辺の気象状況を監視する必要があり、本年度に島内の複数箇所に気象観測機を設置する。出発地と到着地の観測機で計測した風向や風速などのデータをインターネット上のクラウドサービスに集め、オペレーター(操縦者)が飛行可否を判断する仕組みだ。
 現在公募している専門業者に委託し、年度内に奈留島-前島間での飛行実験を始める。来年度以降は赤島や黄島など他の二次離島でも実施し、最終的には五島列島の中央部にある奈留島を拠点とした物流体制の構築を目指す。
 市商工雇用政策課は「ドローンを飛ばす環境を整えて全国の関連企業にPRし、4分野以外にも水産や防災などさまざまな地域課題の解決につなげたい」としている。

ドローンを活用した離島間物流のイメージ

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