逮捕のリスクは高く、報酬も得られない-。全国で横行する振り込め詐欺事件に関わったとして神奈川県警に逮捕された容疑者への調査で、こんな実態が浮かび上がった。指示役を頂点に役割が細分化する犯行形態を象徴するように、現金の受け取り役などの末端は20代以下の若者が8割以上に達した。県警幹部は「善悪の判断が未成熟な若者が、リスクの高い役割を担わされ、使い捨てにされている」と指摘。「小遣い稼ぎの感覚で手を染めた結果、取り返しのつかないことになる」と警鐘を鳴らしている。
調査は今年1~9月に県警が振り込め詐欺などに関与したとして詐欺容疑などで逮捕した162人を対象に実施、うち96人が応じた。
96人の約9割は現金やキャッシュカードの受け取り役。年代別では20代(46%)と10代(38%)が大半を占めた。
動機について約8割が「金銭目当て」と回答。一方で、半数強の51人が約束されたはずの報酬を全く得られていなかったことが分かった。報酬があったと答えた約20人も、得られたのは10万円未満だったとした。「報酬はもらえないし、必ず捕まる」「受け取り役は逮捕要員」「まじめに働いた方がいい」などと後悔の言葉が口をついた。
詐欺グループに加わった経緯については、約7割が友人や先輩など面識のある人物からの勧誘だったと明かした。それ以外では、インターネットサイトの「高収入」の文句に飛びついたとの回答もあった。
目先の金欲しさなど、軽い気持ちで手を染めた代償は大きい。「刑務所に行くことになった」「進学が決まっていた学校の入学が取り消された」「詐欺グループから何かされるのではないかと、毎日びくびくしている」…。
県警幹部は「犯行を指示する者たちは、甘言を弄(ろう)してあの手この手で未成年者ら若者を囲い込む。本人はもちろん家族への危害もちらつかせるなどして利用し尽くす」と警告している。
◆県内の特殊詐欺
県警によると、今年1~9月末までの認知件数は1896件(前年同期比291件増)、被害総額は約40億8千万円(同1億3千万円増)。認知件数、被害総額とも過去最悪だった2017年(2423件、約57億7千万円)を上回るペースで推移している。県警が特殊詐欺で摘発した容疑者のうち、未成年者の割合は17年に全体の約27%に達し、16年の約15%から急増、低年齢化の傾向が顕著になっている。
◆振り込め詐欺に関わったとして 逮捕された容疑者の言葉
【代償】
・詐欺グループから何かされるのではないかと、毎日びくびくしながら生活している
・刑務所に行くことになった
・家を引き払い、帰る場所がなくなった
・内定が取り消された
【教訓】
・指示役を信じるな
・グループを抜けようとすると危害を加えられる
・受け取り役は逮捕要員
・報酬をもらえず、弁護士費用や被害弁済などで、余計な金を負担する羽目になる