お手柄 不明高齢者を保護 認知症ケア技法で安心感 

 家族から捜索願が出ていた佐世保市内の高齢女性を保護したとして、介護老人保健施設長寿苑(日宇町)の介護福祉士、小田和文恵さん(41)が佐世保署から礼状を受けた。小田和さんは認知症の人と信頼関係を築くフランス生まれのケア技法「ユマニチュード」を活用し、相手が安心できるよう寄り添った。
 8月15日、仕事が休みだった小田和さんは友人が運転する車に乗っていた。鹿子前トンネル(鹿子前町)内を走行中、トンネル内を歩いている高齢女性を発見。一瞬振り返った女性の表情が気になり、車を止めてもらい声を掛けた。
 会話を重ねるうちに認知症の疑いがあると判断。警察に連絡した。女性と接する際は、施設で取り入れている「ユマニチュード」を心掛けた。背中を優しくさすりながらゆっくりと話を聞き、「家まで案内する人が来てくれるから心配しなくていいですよ」と声を掛け続けた。
 女性は買い物中に家族とはぐれていた。家族から捜索願が出ていたが、無事に戻すことができたという。
 人に喜んでもらえることが好きで、泣いている子どもや困っていそうな人を見かけると、声を掛けずにはいられないという小田和さん。昨年6月にも、徘徊(はいかい)中の高齢者を保護している。
 小田和さんは「『利用者を大切に思う家族と同じ気持ちで接したい』という初心をあらためて思い出した。周りに感謝しながら仕事を続けたい」とほほ笑んだ。

◎ユマニチュード

 ▽正面から「見つめる」▽優しいトーンで語りかけるように「話しかける」▽手のひらなど広い面積で優しく「触れる」▽「立ってもらう」(1日のうち立つ時間をつくる)-の4本柱で、認知症患者の不安や緊張を和らげるケア技法。長寿苑を運営する社会医療法人財団白十字会は、2015年から全職員で習得に向け取り組んでいる。寝たきりでしゃべらない患者の表情が豊かになったり、話すようになったりするなどの効果が見られるという。

施設利用者と談笑する小田和さん=佐世保市、長寿苑

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