【スチール缶リサイクル協会】17年度のスチール缶リサイクル率93.4%、7年連続90%台達成

 2017年度のスチール缶リサイクル率(スチール缶リサイクル協会発表)は93・4%と、過去最大だった前年度より0・5ポイント低下したものの、11年度から7年連続で90%以上を達成した。16年度から始まり、20年度を目標年度とする自主行動計画2020(第3次自主行動計画)に定めるリサイクルの数値目標(90%以上維持)も満たした。

 スチール缶の消費重量が45万1千トン(16年度は46万3千トン)に対し、鉄鋼原料に再資源化された缶重量は42万2千トン(同43万5千トン)となった。スチール缶のリサイクル率は、資源循環システムの確立や高付加価値化や高品質化の進展、堅調な鉄スクラップ需要などを背景に引き続き高位で安定的に推移している。

 スチール缶のリサイクル率は、スチール缶の販売から回収、再利用されるまで3カ月かかると想定し、消費重量(対象2017年1~12月)と回収・再資源化重量(17年4月~18年3月)のデータを基に算出している。

 スチール缶をめぐっては、飲料用の分別や再資源化が広く社会に浸透し、全国で96%以上の自治体において分別収集の対象になっている。リサイクル活動においては官公庁に加え、一般の企業や市民の動きも活発で、地域や産官学の枠組みにとらわれない幅広い取り組みが好循環につながっている。

 17年の世界粗鋼生産は中国やインド、トルコといった国で大幅に生産量が増え、16億9千万トンと過去最高を更新。18年も全体で初めて17億トンを上回る見通しで、鉄スクラップ需要も好調に推移する。日本の粗鋼生産量も年間1億500万トンと高く、特にスチール缶スクラップは国内で自給できる貴重な原料の一つとして高い需要を維持するなど高値で安定した取引が続けられている。

中村真一理事長/使用済みスチール缶/持続可能な循環型社会構築に尽力

 私どもスチール缶リサイクル協会は、使用後のスチール缶の散乱防止と環境美化、並びに再資源化を推進するために1973年に設立され、今年で46年目を迎えました。参加事業者は、スチール缶に係る鉄鋼メーカー3社・製缶メーカー3社並びに商社6社の合計12社で構成しております。

 わが国最初の個別リサイクル法である容器包装リサイクル法は、国民・自治体・事業者がそれぞれの役割を果たすことにより、家庭から出るごみの容積比で約6割を占める容器包装廃棄物を資源として有効利用し、ごみの減量化を図るための法律です。当協会は、95年に施行されたこの法律に先駆けて、国民・自治体・事業者との連携協力のもと、容器包装リサイクル法の枠組みの基礎を築くと共に、持続可能な循環型社会構築に尽力してまいりました。

 その結果、消費者の分別排出・市町村の分別収集並びに事業者の再資源化体制が進展し、現在では使用済みスチール缶は安定的に資源循環が行われています。合わせて、地域での清掃活動や環境美化活動、集団回収活動などの自主的な取り組みも活発になされてきております。

 今後も当協会は、消費者・自治体・事業者の連携をいっそう深め、さらなる環境美化推進とスチール缶の資源循環推進を通じて持続可能な循環型社会構築に貢献してまいります。

17年度のリデュース率、04年度比/7.83%の軽量化を実現

 2017年度のスチール缶のリデュース(軽量化)率は、基準年度の04年度比で1缶当たり7・83%(1缶当たり2・78グラム)の軽量化を実現した。20年度に04年度比8%の軽量化を目指す自主行動計画2020(第3次自主行動計画)に向けて関連する取り組みを継続する。

 1缶当たりの平均重量を軽量化の指標に充てる。基準年度(04年度)の35・5グラムに対し、17年度が31・6グラムと10・99%(1缶当たり3・9グラム)の軽量になった。リデュース率の算出においては缶型構成比の変化による影響を差し引いた真水の部分をリデュース率に反映している。

 リデュース率は、総生産数の84・4%を占める主要5缶型(160ミリリットル缶、200ミリリットル缶、250ミリリットル缶、280ミリリットル缶、350ミリリットル缶)について、生産する全6社を推進の対象にしている。

 スチール缶リサイクル協会を含む容器包装の素材にかかわるリサイクル8団体は、05年12月に「3R推進団体連絡会」を結成。06年3月に公表した「事業者による自主行動計画」を踏まえ、スチール缶メーカーで構成する日本製缶協会は同年6月「スチール缶軽量化推進委員会」を立ち上げ、軽量化に取り組んでいる。

小中学校・各種団体を支援/17年度、53団体・52校を表彰

 スチール缶リサイクル協会は2008年から、社会貢献の一環で支援事業を実施している。スチール缶の集団回収を実施した地域の町内会・子ども会・老人会・PTAなど各種団体や、優れた環境教育に取り組む小中学校を支援・表彰しており、2017年度は53の団体と小中52校が対象となった。18年度は100団体以内に総額250万円以内、60校程度に600万円以内の支援を計画している。

 協会では、これまでの調査を踏まえ、幼少期から実践を伴った環境教育を受けることが、一般市民の3Rへの意識向上に際して重要と判断。次代を担う子供たちの集団回収活動への参加が持続可能な循環型社会の構築に向けた環境教育として有効であるとの考えから、応募のあった小中学校から優れた環境教育を実施している対象校を選定している。

 日本鉄鋼連盟と日本製缶協会が協賛し、経済産業省と全国小中学校環境教育研究会、3R活動推進フォーラム、NPO法人こども環境活動支援協会、一般社団法人産業環境管理協会、リデュース・リユース・リサイクル推進協議会が後援する。

 各種団体においても地域のコミュニティーの活性化や排出機会・環境意識・スチール缶スクラップの質などの向上、社会全体のコスト削減といった事業効果が見込まれる。

普及啓発ポスター製作/全国2180カ所に配布

 スチール缶リサイクル協会はこのほど、2018年度の普及啓発ポスター「あれもこれもスチール缶から」を製作した。自動車やビル、家電といった市民生活のさまざまなシーンに登場する、鉄を使った身近な製品をスチール缶の表示に使う矢印に乗せて紹介。何にでも何度でも再生できる特徴を通じて、安定的かつ持続可能な循環型社会の構築に寄与するスチール缶の優位性を広く訴求する。

 協会では会員企業をはじめ全国2180カ所で計2740枚を配布。環境意識の向上を狙いに普及啓発・広報用として活用してもらう。

「清掃と美化の普及啓発」活動/45年間、360カ所で実施

 スチール缶リサイクル協会は、あき缶の散乱防止と美化促進を目的に地域と連携して「清掃と美化の普及啓発」を継続実施している。1973年に開始し、今年で46年目を迎える。

 2017年度には6月に札幌市で約80人、9月には福井市で約650人が参加。18年度は6月に鹿児島市で約370人が立ち会ったほか、11月には和歌山市で予定している。

 協会ではこれまでに360カ所で計503回同様の啓発活動に当たっている。

製鉄所見学会を開催/小中高大の関係者らが参加

 スチール缶リサイクル協会は、製鉄所見学会を開催している。国民の環境意識向上や鉄鋼メーカーなどによる事業者の環境に配慮したものづくりや環境活動を理解してもらう狙いで2009年から継続している。

 17年度は、▽7月25日(JFEスチール東日本製鉄所千葉地区/首都圏の小中高校の先生8人)▽7月28日(新日鉄住金君津製鉄所/慶應義塾女子高21人)▽8月22日(新日鉄住金君津製鉄所/保護者を含む東京都中央区の小学生39人)▽18年1月9日(JFEスチール東日本製鉄所千葉地区/大正大学人間環境学科11人)に実施。

 18年度には、▽6月15日(JFEスチール東日本製鉄所千葉地区/缶詰記者会11人)▽7月24日(新日鉄住金君津製鉄所/慶應義塾女子高28人)▽8月2日(JFEスチール東日本製鉄所千葉地区/首都圏の小中高校の先生19人)▽8月22日(新日鉄住金君津製鉄所/保護者を含む東京都中央区の小学生43人)を企画した。

環境イベントに出展/住民、事業者の意識向上に一役

 スチール缶リサイクル協会は、地域の環境イベントなどに出展し、住民や事業者らの環境意識向上に寄与している。 

 地方自治体や市民団体、事業者らと協力して参画。2017年度は▽エコプロダクツ川越2017(7月、埼玉県川越市)▽子どもとためす環境まつり2017(9月、東京都中央区)▽エコプロ2017(12月)と3つの環境イベントに名を連ねた。会員企業が拠点を構える地域では、▽JFE西日本フェスタinふくやま(5月、JFEスチール)▽小樽市CAN―ARTフェスティバル(9月、北海製罐)▽TKWorksフェスティバルinくだまつ(10月、東洋鋼鈑)▽JFE西日本フェスタinくらしき(11月、JFEスチール)▽東海秋まつり2017(11月、新日鉄住金)で各社に協力した。

 2018年度も引き続き、それぞれのイベントに協力している。地域や自治体、NPO(非営利活動)法人が展開する環境イベントをめぐっては、各者からの協力要請に基づき、清掃活動や環境意識向上のための環境展等で活用するポスターや冊子、ノベルティなどを提供している。

スチール缶リサイクル協会概要

 ▽設立 1973年(昭48)4月17日

 ▽主な役員(敬称略)

 理事長 中村真一(新日鉄住金代表取締役副社長)

 副理事長 森泰治(東洋製罐グループホールディングス常務執行役員)

 副理事長 小林淳(大和製罐常務取締役技術本部長)

 専務理事 中田良平(専任)

 ▽会員会社

 鉄鋼メーカー3社(新日鉄住金・JFEスチール・東洋鋼鈑)

 製缶メーカー3社(東洋製罐・大和製罐・北海製罐)

 商社6社(三井物産スチール・伊藤忠丸紅鉄鋼・メタルワン・JFE商事・日鉄住金物産・東罐商事)

 ▽設立目的 使用済みスチール缶の散乱を防止し、資源としてリサイクルを推進するための調査研究や指導、啓発広報などに取り組み、社会との協働実践を通して社会貢献する。

 ▽実績 家庭ごみの分別収集のシステムや地域一斉清掃活動を推進して社会に広め、容器包装リサイクル法制定に大きく関与。拡大生産責任者という政策的な手法を初めて取り入れた容器包装リサイクルのもと、これまで自治体が分別収集・処理保管したスチール缶の引き取りと再資源化の保証を最初に行った団体として広く活動している。

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