MotoGP日本GPプレビュー:もてぎでタイトル獲得がかかるマルケス。ドヴィツィオーゾの逆転劇なるか?

 今週末、栃木県のツインリンクもてぎでMotoGP第16戦日本GPが開催される。今シーズンも日本GPを含めて残り4戦。日本GPから3週連続でオーストラリアGP、マレーシアGPと続くフライアウェイ3連戦となる。

 ツインリンクもてぎは、1997年に開業、1999年に初めて世界GPのホストコースとなり、この年は日本GPとして開催された。その後、2000年から2003年までは、春の鈴鹿、秋のもてぎと日本で2度ずつグランプリが開催されていたため、もてぎで開催されるGPはパシフィックGPという名称だったが、2004年以降はもてぎで開催されるグランプリが日本GPとなった。

 もてぎのコースはロードコースとオーバルコースのふたつのコースから構成されていて、これがツインリンクというコース名の由来だ。GPの舞台となるのは1周4.801kmのロードコースで、オーバルコースの下をくぐる2カ所の立体交差があり、5コーナー先をファーストアンダーブリッジ、バックストレッチ後の90度コーナー先をセカンドアンダーブリッジと呼ぶ。左コーナー6、右コーナー8の計14のコーナーで構成されており、レイアウト的にはストップ・アンド・ゴータイプのコースで、比較的パッシングポイントも多い。

 過去のレースにおいても、1コーナー、3コーナー、5コーナー進入、S字やV字コーナー、ヘアピン入り口など、多くのポイントでパッシングシーンが見られた。そして、もてぎ最大にして最後の勝負所は、バックストレート後の90度コーナーだ。バックストレート手前のヘアピンをうまく立ち上がれるかが、バックストレートでのトップスピードに影響し、90度コーナーの進入にも影響する。最終ラップまでバトルが続いた場合は、90度から最終コーナーのビクトリーコーナーまで目が離せない戦いとなる。ストップ・アンド・ゴーのもてぎレイアウトは加減速の繰り返しとなるため、ブレーキと燃費に厳しいコースでもある。

 昨年の日本GPは天候に恵まれず、セッション途中からドライとなったMoto2クラスの予選を除き、初日から決勝日まで、ウエットコンディションで各セッションが行われた。

 MotoGPクラスの決勝では、ウエットコンディションの中、マルク・マルケス(ホンダ)とアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ)が最終ラップの最終コーナーまで接戦を展開。最終ラップにトップで入ったのはマルケスだったが、S字立ち上がりでリヤが振られ、その間にドヴィツィオーゾが接近。バックストレートでドヴィツィオーゾがスリップから抜け出して前に出る。マルケスはあきらめず、最終コーナーでインをねらうが、ラインに乗れず、先に立ちあがったドヴィツィオーゾがトップでチェッカーを受け、シーズン5勝目をマーク。僅差の2位にマルケスが続いた。レース序盤トップを走行していたダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ)はドヴィツィオーゾとマルケスに交わされて3番手に後退、単独3位でチェッカーを受けた。

マルケスとドヴィツィオーゾの一騎打ち(2017MotoGP日本GP)

 Moto2クラスではアレックス・マルケス(カレックス)が優勝、2位にチャビ・ビエルゲ(テック3)が入賞し、Moto2クラス初表彰台を獲得。3位にハフィス・シャーリン(カレックス)が入賞した。

 Moto3クラスではロマーノ・フェナティ(ホンダ)が優勝、2位にニッコロ・アントネッリ(KTM)が入賞し、マルコ・ベゼッチ(マヒンドラ)がグランプリ初表彰台となる3位に入賞した。

 MotoGPクラスでは、前戦タイGPでランキングトップのマルク・マルケス(ホンダ)が優勝し、ランキング2位のアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ)とのポイント差が77ポイントとなった。

 日本GPを終えた段階でその差が75ポイント以上となれば、マルケスのMotoGPクラス通算5度目(グランプリ通算7度目)のタイトルが確定する。一方、ドヴィツィオーゾにとっては、今レースはマルケスに負けられない戦いとなる。昨年もこのふたりが決勝では最終ラップまで一騎打ちを繰り広げており、ふたりのバトルに注目だ。

 バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)はドヴィツィオーゾから22ポイント差のランキング3位、マーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)がタイGPでの3位入賞でランキング4位に復帰したが、ロッシとは26ポイント差ある。今シーズン、ここまで勝ち星のないヤマハは厳しいレースが続いているが、前戦タイGPではビニャーレス、ロッシ共に最後までトップ争いに加わった。ヤマハにとってはホームレースとなる日本GPでその流れを生かせるか。

 ホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ)はタイGPのフリー走行での転倒によりレースを欠場。もてぎでの復帰をめざす。もてぎの1000cc時代のMotoGPクラスでは、ヤマハ時代の2013年と2014年に優勝している。ケガの回復次第とはなるが、もてぎを得意とするロレンソの活躍がタイトル争いを左右する可能性もある。

 ランキング6位にカル・クラッチロー(ホンダ)、ランキング7位にダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ)、ランキング8位にヨハン・ザルコ(ヤマハ)のインディペンデントチーム勢が続く。インディペンデントのトップ争いは接戦で、クラッチローとペトルッチが2ポイント差、ペトルッチとザルコが2ポイント差。昨年のもてぎではペトルッチが3位入賞、ザルコがポールポジションを獲得している。クラッチローは昨年は転倒リタイアに終わっているが、インディペンデント勢のバトルにも注目が集まる。

 ランキング9位にアンドレア・イアンノーネ(スズキ)、ランキング10位にアレックス・リンス(スズキ)とスズキ勢が続く。イアンノーネはアラゴンGPで今季3度目の表彰台を獲得。この結果、スズキはマシン開発のコンセッションを失うことになったが、昨年と同様、シーズン後半に向けて、スズキのマシン開発は着実に進んでいる。ホームレースとなる日本GPでもトップ争いに加わる活躍を見せてくれるはずだ。

 ランキング11位のダニ・ペドロサ(ホンダ)は今回がもてぎラストレースとなる。もてぎでは、MotoGPクラスで4勝、250ccクラスと125ccクラスで1勝ずつを記録しており、通算4回ポールポジションを獲得するなど、ペドロサが得意とするコース。ラストレースでどんな走りを見せるかに注目。

 中上貴晶(ホンダ)はMotoGPライダーとして初のホームレース。来季の継続も正式発表された。中上は昨年のMoto2クラスではポールポジションを獲得しており、もてぎは全日本時代から得意とするコースだけにベストリザルト獲得に期待がかかる。

 ワイルドカードでは、ヤマハYZR-M1の開発ライダー、中須賀克行(ヤマハ)が参戦する。2012年以降、ワイルドカード参戦した日本GPでは全戦で入賞。2015年には8位に入賞している中須賀だが、マシン開発の重責も担っての参戦。特に今シーズンはここまで勝利のないヤマハにとって、来季以降も含めて中須賀の実戦参戦は重要なものとなる。

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