サギとカモ

 アオサギといえば本県各地に生息する大型のサギだ。普通は魚やカエルなどを食べる▲そのサギがまれに、同じ野鳥のカモを捕らえて丸呑(の)みする。長崎市のアマ写真家、山口政勝さんはそんな瞬間の撮影に成功、第47回キヤノンフォトコンテストのネイチャー部門で大賞を受賞した▲サギがカモを食らうのは、自然界では非常に珍しい出来事だ。しかし人間の世界では、サギがカモを狙うケースが後を絶たない。もちろんこれは詐欺の話。特に近年は高齢者をターゲットにした特殊詐欺が頻発している▲県警によると、今年の県内の特殊詐欺被害は、9月までに40件8460万円。昨年同時期と比べると半減したが、根絶には遠い。高齢者がこつこつ貯めてきた老後の生活費が、あの手この手で狙われているという▲電話口で「おれおれ」と息子のふりをして送金させるのは序の口。役所職員などを装って高齢者を現金自動預払機(ATM)へ誘導、還付金を受け取っているかのように思わせて、実際は本人の手で犯人の口座へ金を振り込ませるケースも多い。機械操作に不慣れな高齢者の弱みを突いた卑劣な犯罪▲大切なお金を失った被害者の老後の人生は台無しになる。そんな不幸な人を生み出さないため、高齢化社会に生きる私たちは引き続き知恵を絞らなければならない。(泉)

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