社説:KYB免震不正 安全の軽視は許されぬ

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 油圧機器メーカーのKYBと子会社が、地震の揺れを抑える免震・制震装置で性能検査記録データを改ざんしていた。

 病院や庁舎といった災害時に拠点となる公共施設など、京滋を含む全都道府県986件の建物に使われていた。

 地震国に暮らす国民の安心・安全を脅かし、信頼を裏切る深刻な不正行為と言わざるをえない。

 原因の徹底究明と併せ、不正製品の交換や安全性の点検など対策を早急に講じてほしい。

 国の基準に合うようにデータを書き換えていたのは、油の粘性を利用して建物の揺れを少なくするオイルダンパーという装置だ。

 KYBによると、データ改ざんは2003年1月から18年9月まで行われた可能性が高く、少なくとも工場の担当者8人が関与し、口頭で引き継がれていた。

 その理由が再検査の手間を省くためというから、あきれる。社員のモラル低下や社内の管理体制に不備があるのは明らかだ。

 問題なのは、15年に東洋ゴム工業の免震偽装事件が表面化した後も不正が続けられたことだ。自らの問題として実態把握することもできたはずだった。

 だが、子会社の従業員の指摘を受けて調査を始めたのは今年9月だ。全容解明へ外部調査委員会を設けたが、組織的な不正の有無や責任の所在を明らかにする必要がある。

 国土交通省は、免震装置メーカーの一斉調査に乗り出した。東洋ゴムの問題後、再発防止策に取り組んだはずなのに、KYBの不正を見抜けなかった。

 こうした事態が続けば、日本の免震技術への信頼を失わせかねない。対策の検証と企業の監視強化が求められる。

 近年、神戸製鋼のデータ改ざんをはじめ三菱マテリアルや東レ、日産自動車、SUBARU(スバル)など日本のものづくりを代表する企業で不正が止まらない。

 各社に共通するのは、コスト削減を強いられる中、現場の規範意識が著しく薄れ、ガバナンス(企業統治)が機能していないことだ。

 KYBの中島康輔社長は16日の会見で謝罪したが、対象施設名を公表せず、利用者の不安に応えようとする姿勢は乏しかった。説明責任を十分に果たしたとは言いがたい。

 失った信頼を回復するには社員一人一人の意識改革とコンプライアンス(法令順守)の徹底が不可欠だ。