諫干問題 長崎、佐賀視察 「非開門、基金で和解を」 農相要請、漁業者側は反発

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の開門調査問題を巡り、吉川貴盛農相は18日、就任後初めて長崎、佐賀両県を訪れ、地元首長や開門派漁業者らと意見交換した。開門派漁業者らとの意見交換で、吉川農相は「開門せずに漁業振興基金による和解方針が問題解決への最良の方策」と理解を求めたが、漁業者側は「基金と引き換えに開門をあきらめることはない」と反発、双方の主張は平行線に終わった。
 昨年4月に国が「非開門」方針を表明後、農相が開門派漁業者と懇談したのは初めて。開門派弁護団の馬奈木昭雄団長は、漁業者にとどまらず、干拓農地の営農環境改善に向けた開門調査の必要性を強調。吉川農相は懇談後、「それぞれの意見を真摯(しんし)に受け止め、国の方針を理解してもらうよう努力したい」と述べた。
 佐賀市での開門派漁業者との意見交換に先立ち、吉川農相は諫早市中央干拓で営農状況を視察。中村法道知事らと市内で懇談した。中村知事は「開門しない方針に沿って、開門問題の早期解決と真の有明海再生、(環境基準値を上回る)調整池の環境改善に取り組んでほしい」と要請した。
 この後、吉川農相は有明海のノリ養殖場を船上から視察。佐賀県の山口祥義知事は佐賀市内での意見交換会で、開門調査を含む有明海異変の原因究明と有明海再生事業の継続実施を要望。吉川農相は「開門訴訟の帰趨(きすう)にかかわらず、引き続き(再生事業の)予算を確保したい」と答えた。
 同席した同県有明海漁協の徳永重昭組合長は、佐賀、福岡、熊本の3県漁業団体が求めている潮受け堤防排水門の小まめな排水など3項目の要望に関し、「国の責任で誠意ある対応を」と求めた。
 諫干事業では、開門を命じた2010年の確定判決を巡り、国が開門を強制しないよう漁業者に求めた請求異議訴訟控訴審で福岡高裁は7月、国側の請求を認め、開門命令を事実上無効としたが、開門派は上告している。

ノリ養殖漁場を船上から視察する吉川農相(中央)=佐賀県白石町沖

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