非開門方針表明後 初の意見交換 議論は折り合わず

 国営諫早湾干拓事業で国が昨年4月に非開門方針を表明後、初めて実現した18日の農相と開門派漁業者らとの意見交換。だが、双方が有明海再生を願いながらも議論は折り合わず、わずか約20分の設定時間に開門派からは「帳面消しだ」と反発の声が上がった。
 「無条件降伏させようとしている」。佐賀市内での意見交換。漁業被害を訴え、裁判で争っている開門派の馬奈木昭雄・弁護団長は、非開門方針を固持する国側に不満をぶつけた。向かい合った席で吉川貴盛農相はメモを取り続けた。
 国は昨年4月、開門せずに有明海再生のための100億円基金で和解を目指す考えを表明。国は和解成立を基金案の条件にしている。
 これに対し、馬奈木団長は「開門をあきらめる引き換えに基金100億円を出すというのは到底飲めない」と批判。和解の成否にかかわらず、基金案の実行を求めた。
 意見交換には、開門を求める干拓地営農者も同席。松尾公春さんは「ハウスで小さく区切って農業をやるしかなく、広大な農地で大規模農業をするという干拓の農業と逆行している」と訴えた。
 終了後、開門派は「ずっとメモを読んで、大臣の意思が全くなかった。原告団と会った、という帳面消しだ」と批判した。
 一方、今回の農相視察について、開門反対派の諫早湾防災干拓事業推進連絡本部の栗林英雄本部長は「国の非開門方針を信じて、お任せする」と期待した。

馬奈木弁護団長の訴えをメモに取る吉川農相(右)=佐賀市、ザ・ゼニス

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