強風で流される船続出 衝突に注意、海保が呼び掛け

 強風でいかりが利かず船が流される「走錨(そうびょう)」による海難事故が国内で相次ぎ、第3管区海上保安本部(横浜)は、東京湾の海上施設への衝突に注意を呼び掛けている。羽田空港や東京湾アクアラインのほか、海上に点在する原油や液化天然ガス(LNG)の受け入れ基地に衝突すると大惨事につながる。関係機関に対し「特に東京湾に不慣れな外国船には事前に情報提供し、積極的に走錨防止に取り組んでほしい」と訴えている。

 9月の台風21号では走錨したタンカーが関西空港の連絡橋にぶつかり大きな被害が出た。台風24号でも、10月1日未明に外国船籍の貨物船が約4キロ流され、川崎市川崎区の護岸に衝突する事故が発生した。シーバースと呼ばれる原油やLNGの受け入れ基地が近くにあり、担当者は「走錨した方位によってはシーバースに衝突する危険性があった」と危機感を募らせる。

 3管管内の海事関係者や関係官公庁など官民が参加した「海の安全運動推進連絡会議」が19日、横浜市中区の横浜第2合同庁舎で開かれ、3管は2件の走錨事故を報告。「いずれも人命を失うことはなかったことは不幸中の幸い。東京湾内で同様の海難を防ぐため注意喚起を行いたい」と異例の呼び掛けを行った。

 3管によると、東京湾での船の位置は東京湾海上交通センターが船舶自動識別装置(AIS)やレーダーで把握。停泊する船の全長や水深といった数値からモニター上に仮想の円を描き、船が円の外に出たら走錨の可能性があるとして、アラームが鳴る仕組みで監視している。走錨を認知した場合は船長に情報提供や勧告を行う。3管は「根幹は船長が海域や地域の特性、気象海象、自船の操縦性能を含めて対策を徹底することだ。特に外国船に対して協議会や団体を通じて趣旨を伝えてほしい」と呼び掛けた。 

台風24号で走錨した貨物船が停泊していた海域=12日、横浜港

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