リカレント教育の重要性(10月21日)

©株式会社福島民報社

 学長職に就いて二年半が過ぎようとしている。当て職で様々[さまざま]な会議に出させて頂く機会が増えたが、出席者のうち男性が圧倒的に多数を占めている。ジェンダーギャップ指数百四十四カ国中百十四位の国であることを痛感する。日本女性の政治経済分野への参画は、世界の動きに圧倒的に後れをとっている。

 また、人生百年時代といわれ、私たちは、長期化するセカンドライフを意識して生活して来ただろうか。退職後の二十年、三十年、もしかしたら四十年をどう生きるかというプランを持って定年を迎えている人はどのぐらいいるのか。セカンドライフは、事前にしっかりと準備した人ほど、充実した毎日をおくることができるといわれている。

 人生百年時代には地域社会に開かれた大学が必要とされている。少子高齢化と人口減少に伴い、急速な変化をしている地域の課題は、現代社会における人類の課題である。生活の場である地域は、様々な学問分野にとって最良の学びの場を提供してくれる。大学の教職員や学生が、地域を研究や学びの場としている。

 地域の課題や地域資源を市民と共に洗い出し、課題解決の手立[だ]てを市民と共に共創する。地域の行政や企業も加わり、産官学の協働体制で取り組む。それぞれが互いの立場や違いを尊重し、お互いに学び合いながら、協働して役割分担する。それぞれの持つ情報を共有し、協働による相乗効果を発揮するように牽引[けんいん]することも、大学の役割である。地域の課題解決に大学が積極的に取り組むことは、地域の人々が学び合い、つながり合うことに大学が貢献することにもなる。この労働と教育の場を共有する大学の取り組みも、「リカレント教育」に位置づけられる。

 「リカレント教育」は、一九七〇年代の初め、OECD教育調査団の報告書『日本の教育政策』に収められた、委員の一人、ヨハン・ガルツングの小論文で紹介された。この時期すでに、ヨーロッパの一部の国では、人生周期で、教育期と労働期の間の行き来が自由になる「教育のリカレント化」が急進展し始めていた。一九七五年にはOECDから『リカレント教育』という刊行物が出され、当時の文部省から翻訳も出ている。そして、今から三十年以上も前、日本政府・文部科学省も教育のリカレント化を、政策課題として高らかにうたい上げた。

 ところが、OECD作成の最新の国際比較によれば、高等教育機関への入学年齢で二十五歳以上の学生の比率が、加盟国平均の21%に対して、日本は1%にも満たない。なぜ、日本では、教育の生涯学習化・リカレント化が進まなかったのか。確かに、大学が十八歳入学にこだわったことにもよる。しかし、もう一つの原因は、多くの企業が「新卒採用主義」にこだわり続けていることにある。今度こそ、官民学が連携し、教育期と労働期の間の行き来が自由になる、教育と学習の生涯化・リカレント化を可能にする政策を期待する。(西内みなみ・桜の聖母短期大学学長)