耳をそばだてる

 軽やかなフットワークで幅広く。一つの物事をぐんぐん深く。そうしたご意見の一つ一つを胸に刻む。きょうまでの「新聞週間」に寄せて、小紙への批評、提言を各方面から頂き、「もの申す!長崎新聞」の題で載せた▲「そこでしか、その日しか読めないような話を」「長崎の出来事を深く知ることができて、考えさせられる記事が読みたい」「深掘りで勝負を」。なるほどと思い、同時に耳の痛いご意見が並んだ▲新聞の務めは何か、と問い直すこの時期にほぼ重なって、今月、重大な事件に「半世紀の節目」が巡ってきた。報道で公にされて50年のカネミ油症問題である▲大勢の人が健康を奪われた。穏やかに、幸せに生きる時間を奪われた。油症患者の子や孫、つまり「次世代患者」も含めた救済は課題のまま残る。「半世紀の節目」と書いたが、事件は区切りなく続いている。この先も、また▲取材している26歳の五島支局長は先ごろ、自分の思いを記事にした。多くがひっそりと生きる認定患者は「社会のはざまで、耐え忍んでいるようにも見える」と書き、重い口を開いてくれた人の言葉は「私たちを忘れないで-。そんなメッセージに思えてならない」と書いた▲社会の小さな声に耳をそばだてること。「深く深く」のご意見に応える第一歩ではなかろうか。(徹)

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