長崎で外国人実習生の失踪多発 1~9月で90人 高報酬求め都市部に流出?

 長崎県内で働きながら技能や知識を学んでいる外国人技能実習生の失踪が後を絶たない。県警によると、1~9月に行方不明になったのは90人。昨年の79人を既に上回っている。会員制交流サイト(SNS)などで実習生同士が情報交換し、より高い報酬の職場を求めて都市部に流出している可能性がある。

 外国人技能実習生制度は外国人を日本の企業や農家などで受け入れ、技術を母国の経済発展に役立ててもらう制度。1993年に始まった。期間は最長5年。2017年10月時点で全国に約25万8千人、県内に約2600人いる。国籍別ではベトナム、中国、フィリピンの順で多い。
 実習生が右肩上がりで増加するのと比例し、失踪者も増えている。法務省によると17年の失踪者数は約7100人で前年比40%増。14年の約2千人の3倍以上になった。県警生活安全企画課によると、県内の失踪者は1~9月で90人(男30、女60)。昨1年間の79人(男38、女41)を上回っている。
 背景にあると指摘されるのが、実習先での時間外労働や賃金不払いなどの法令違反。加えて近年では、SNSの普及が拍車を掛けている。国内に張り巡らされたネットワークを使って実習生同士が高賃金の職場を情報交換。地方から都市部に手引きをしているケースもあるとみられる。
 監督機関の外国人技能実習機構(東京)によると、失踪した実習生は入管難民法違反(資格外活動)状態となり、不正行為が確認された実習先は認定が取り消されることもある。関係者は「まずは受け入れ側が親身に対応し、失踪を未然に防ぐことが重要だ」と指摘する。
 実習生の受け入れ窓口となる県内の監理団体は対策に頭を悩ませている。
 雲仙市の監理団体では、ここ数年で中国人女性7人が失踪。担当者は「仕事をあっせんするブローカー組織があると聞いた。犯罪に巻き込まれていないか心配だ」と声を落とす。諫早市の監理団体でもこの1年でベトナム人の男女7人が行方不明に。「渡航費などの費用や労力を費やしてきたのに損失だ」と担当者。
 西海市では今年4月、20代のベトナム人女性が実習先に「病院に寄ってから出勤する」と連絡後、突然姿を消した。部屋にはボストンバッグなどがそのまま残されていた。担当者は「トラブルはなかったのに…。24時間監視するわけにもいかないし、失踪を防ぐのは難しい。ほとんどの実習生は真面目に働いている。一層目配りするしかない」と話した。

長崎県内の外国人労働者数の推移

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