引退の西武・松井稼頭央、最後に遊撃に手を当てて別れ「育ててもらった場所」

西武・松井稼頭央【画像:(C)PLM】

CS敗退後に同僚から「まさか」の胴上げ「選手の皆さんに感謝しています」

 21日。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第5戦でソフトバンクに敗れ、2勝4敗(アドバンテージ1勝を含む)で日本シリーズへの切符を手にすることができなかった西武。最終戦セレモニー終了後、今季限りでの引退を表明している松井稼頭央外野手が一人、レフトスタンドへ歩を進め、応援してくれたファンに一礼。その後、ショートの位置に手を当て、グラウンドに別れを告げた。

 CSファイナルでの出場機会はなかった。「当然、いつでも出場できる準備はしていました。常に試合に出たいのはどんな試合でも変わらない。日本シリーズを目指すメンバーに入れていただいた。出場する可能性があるならば、しっかり準備をするだけです」と、最後の試合もこれまで同様、いつでも行ける準備をしてベンチで戦況を見つめていたという。

 悔しい敗戦の後に行われた最終戦セレモニーで、選手たちから胴上げされた松井。本拠地・メットライフドームに詰めかけたファンの前で7回、宙を舞った。「まさか胴上げしてもらうとは思っていなかった。選手の皆さんに感謝しています」と、率直な思いを語った。

 そして、選手全員による優勝ペナントを持っての場内一周のあと、ファンに改めて挨拶するため、一人レフトスタンドへ駆け寄り、深々と一礼した。「本当に15年ぶりにライオンズに戻ってきて、またこうして、ファンの皆さんにも受け入れていただいて、試合に出るたびあれだけの声援をいただいていたっていうのは、本当に力になりましたし、その声援をもらうために頑張ろうという気持ちで1年間ずっとやってきました。この3年間、心が折れていることが何度かありましたが、ファンの皆さんの力、その声援があって、それを励みにやってきた1年間だった。あの声援は、本当に感謝しています」と、その心中を明かした。

後輩たちに託した日本一、今季の優勝は「胸を張っていいと思うし、自信にもなっていると思う」

 そして、レフトスタンドから引き上げる際、ショートの位置でグラウンドに手を当て、しばらく目を閉じる。「辞めるときに、やりたいな」という思いが以前は頭にはあったという松井。「挨拶に行って引き上げるときに、あの場所を通ったので自然とやってしまった。あのタイミングしか(ショートに)行けなかったので。ライオンズに入団し、ショートとして育ててもらった場所ですし、今日、最後の現役選手として『ありがとうございました』という気持ちで」と、思い出の場所への感謝の思いが、あの行動になった。

 今後、どのような形でチームを支えていくかは、これから球団との話していくことになるが「当然、練習に来て」と、何らかの形で秋季練習に参加するという。しかし、その前に「まず休みます」。しばらくは疲れた心身を癒す時間をとるとのこと。

「日本一になって嬉し涙を――」

 引退会見で語ったその夢は、果たされることなく終わりを告げた。

「チーム全員でそこを目指したわけですからね。でも勝負の世界、当然勝敗はある」と、悔しさをかみしめながら「本当に頼もしかった。若い選手もいる中、その若い選手が力をつけ、レギュラーシーズンを勝ち抜いて優勝した。当然、胸を張っていいと思うし、自信にもなっていると思う」と、共に戦ってきたチームメートたちを称えた背番号7。「CS敗退の悔しさを来年、選手のみんなが雪辱に向けて、日本一を目標に頑張ってくれると思います」。今季果たせなかった夢を後輩たちに託し、現役選手として最後となるこの日、球場を後にした。(岩国誠 / Makoto Iwakuni)

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