新制度で医師不足の拍車懸念 長崎県内医療者がシンポ

 若手医師が分野ごとの高度な知識や技術を身に付けるため、本年度導入された新専門医制度について、県内の地域医療関係者が意見を交わすシンポジウムが13日、長崎市内であった。同制度では若手医師の研修先が大都市圏に集中しており、県内の医師不足や偏在に拍車が掛かることを懸念する声が上がった。
 同制度は2年間の初期臨床研修を終えた医師が、内科や外科など19の基本領域(診療科)から1領域を選び、専門医を目指す。全国で、大病院を基幹施設に複数の病院が連携する各領域の養成プログラム(3~5年程度)を用意しており、毎年度、専攻医を募集する仕組み。ただ、大病院が多い大都市に研修先が集中すれば地方の医師確保が一層難しくなるとの指摘があり、東京など5大都市圏では募集定員の上限がある。
 シンポは14日まで開かれた第40回県地域医療研究会(県病院企業団主催)の一環。同企業団運営の離島・へき地の病院などに勤める医師、看護師ら約200人が参加した。同制度では、長崎大学病院(長崎市)や長崎医療センター(大村市)が企業団の病院と連携したプログラムを展開しており、シンポでは関係者ら4人が講演した。
 同企業団が運営する県上五島病院(新上五島町)の八坂貴宏院長は、初年度の研修先が予想どおり東京などに集中したことを指摘。本県については専攻医83人が研修先に選んでいるが、眼科や皮膚科など誰も選ばなかった診療科があったことなども課題として挙げた。「地域偏在がどんどん進むかもしれず、医療が崩壊しない形の専門医制度にすべきだ」と述べた。
 県内で質の高い研修を展開することも課題。長崎医療センター総合診療科・総合内科の和泉泰衛医長は、連携先の同企業団側に対し「(医師や看護師、事務職員らが)制度に理解を深めると、専攻医はより良い研修ができる。専攻医がスムーズに専門医を取得できるよう協力していきたい」と呼び掛けた。

シンポジウムで、新専門医制度の課題について意見を交わす登壇者=長崎市茂里町、長崎ブリックホール

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