運命のドラフトまであと3日 12球団の補強ポイントを分析、1位指名は誰?

高校生で注目が集まる藤原恭大・吉田輝星・根尾昂・小園海斗(左から)【写真:荒川祐史】

吉田をはじめ、根尾、藤原、小園らが高校生ドラ1候補

 クライマックスシリーズ(CS)が終わり、熱いポストシーズンの戦いも日本シリーズを残すのみとなったプロ野球界。この時期のビッグイベントといえば、CS、日本シリーズ、そして、ドラフト会議だろう。今季は日本シリーズ第1戦の2日前、10月25日に都内のホテルで実施される。

 今年の最大の注目は、甲子園で準優勝し“金農旋風”を巻き起こした金足農の吉田輝星投手だろう。当初は大学進学と見られていた進路だったが、甲子園での快進撃、侍ジャパンU-18での活動などを経て心境に変化が生じ、プロを目指すことを決断。競合は必至と見られているが、果たして、何球団が吉田を1位で指名し、どこが交渉権を獲得することになるか。

 吉田の他にも大阪桐蔭の根尾昂内野手、藤原恭大外野手に人気が集中し、競合となる可能性が高い。報徳学園の小園海斗内野手も含めて、高校生にタレントが豊富。大学生では甲斐野央投手、上茶谷大河投手、梅津晃大投手の“東洋大トリオ”、日体大の松本航投手、立命館大の辰巳涼介外野手らがドラフト1位候補として、名前が挙がっている。競合を覚悟するのか、はたまた他球団を出し抜いて一本釣りを狙うのか。各球団の駆け引き、腹の探り合いはドラフト当日まで続いていくだろう。

 そこで、ここでは各球団の補強ポイントがどこにあるのかを分析。そこからドラフト1位候補を探ってみたい。

【セ・リーグ】
◯広島
 球団史上初となる3連覇を果たし、黄金期到来の広島。戦力的にもセ・リーグの他球団を凌駕し、野手の主力はまだ20代がほとんどと目立った穴は少ない。今季の戦いぶりから見ると、4連覇、5連覇を目指すために補うべきは、今季チーム防御率4.12(それでもリーグ3位だが……)だった投手力か。リリーフにはフランスアやアドゥワが台頭しており、先発に厚みをもたらしたい。1位候補としては東洋大の上茶谷や甲斐野が理想的か。長期的な視点でみれば吉田、そして菊池、田中の後継者として小園といった選択肢もある。

◯ヤクルト
 今季は2位に入りながら、CSで巨人に敗れてファーストステージで敗退したヤクルト。チーム打率.266はリーグ1位、チーム防御率は4.13と、やや投手力が弱い。野手もバレンティンや青木と年齢層が高めではあるものの、喫緊の課題は投手だろう。今季の2桁勝利は10勝のブキャナンのみ。小川は復活したが、石川は来季は39歳。先発4番手、5番手を担える即戦力投手が欲しい。となると、東洋大の上茶谷、日体大の松本らが候補になるだろうか。

◯巨人
 辛うじてリーグ3位に食い込み、クライマックスシリーズには進出した巨人だが、67勝71敗5分の借金4。決してチーム状況は褒められるものではない。来季に向けては投手、野手ともに補強ポイントといえるが、主力の高齢化が進む野手にテコ入れをしたい。阿部を筆頭に、長野、亀井とベテランが並び、坂本も来季は30歳になる。岡本が台頭したが、これに続く存在が欲しい。となると、遊撃を中心に内外野をこなせ、投手としても150キロ超を投げる大阪桐蔭の根尾が理想の存在か。2位以下で即戦力の投手を補っていきたい。

◯DeNA
 4位に終わり、クライマックスシリーズ進出を逃したDeNA。今季は今永昇太、浜口遥大、ウィーランドと投手陣に故障者や不振が相次ぎ、苦しいシーズンとなった。2014年の山崎、石田から今永、浜口、東と即戦力投手をドラフトで指名してきた。これまで通りの流れならば、即戦力投手、となるが、大阪桐蔭の根尾、報徳学園の小園の遊撃手2人はどうだろう。今季不振だった投手らが復調すれば、ある程度の計算はできる。一方で、特に遊撃は大和、柴田らがいるものの、打力に乏しい。打てる遊撃手を加えることができれば、チームに幅が広がる。

中日は根尾の1位指名公言も、補強ポイントは即戦力投手?

◯中日
 6年連続Bクラスに沈み、低迷が続く中日。戦力編成を見ても、投手、野手ともに層は薄い。チーム打率.265はリーグ2位だったが、ビシエド、アルモンテの外国人と平田の活躍によるところが大きい。一方でチーム防御率4.36はリーグ最下位。特に先発は、ガルシアが13勝を挙げたが、これに続くのが松坂と笠原の6勝。即戦力投手を豊富に加えたいところではあるが、すでに準地元の岐阜出身である大阪桐蔭の根尾の1位指名を公言。地元のスター候補ということで理解はできるが、根尾の本職の遊撃には24歳の京田がおり、二刀流としてプレーさせるか。根尾を獲得できれば、2位以下で投手を加えていきたい。

◯阪神
 17年ぶりの最下位に終わり、金本知憲監督が辞任、矢野燿大2軍監督が1軍監督に昇格するという激動のオフを迎えている阪神。チーム防御率4.03はリーグ2位、才木や小野といった若い力もおり、投手力はまずまずと言える。甲子園のスターということで、金足農の吉田という選択肢もあるが、やはり補強ポイントは野手だろう。中核を打つのが外国人と福留、糸井といったベテランで、大山や中谷も殻を破り切れていない。遊撃では糸原が成長を見せており、チームのニーズに合うのはユーティリティー性のある大阪桐蔭の根尾か、外野手の藤原か。

【パ・リーグ】

◯西武
 10年ぶり22度目のリーグ優勝を果たした西武。792得点を叩き出した打線は強烈だが、クライマックスシリーズでは5戦で44失点と投手陣が崩壊して敗退。ペナントレースでもリーグ最下位のチーム防御率4.24だった投手陣をまず真っ先に補いたい。今季は途中加入のヒース、マーティン、小川らがいなければ、もっと厳しい戦いが続いていたはず。さらに、菊池雄星のメジャー挑戦を容認する方針で、即戦力の上茶谷、甲斐野、梅津の東洋大トリオ、日体大の松本あたりがニーズに合致する。将来のエース候補、スター候補として吉田を狙い、2位以下で即戦力の補強を目指しても面白い。野手は若手にも楽しみな素材がいるだけに、投手中心に指名したい。

◯ソフトバンク
 2年連続のリーグ優勝を逃したものの、下克上で日本シリーズを果たしたソフトバンク。今季は投手陣に故障者が相次ぎ、苦しいシーズンとなったが、チームにとっての課題は野手だろう。2011年の武田から、東浜、加治屋、松本裕、高橋純、田中、そして昨年の吉住まで7年連続で投手を1位指名した。投手はそういった若い芽を育て、そろそろチームの将来を担う野手が欲しい。筆頭は大阪桐蔭の根尾か。今宮の後継者としても考えられるし、状況によっては積年の課題とされている“ポスト松田”として三塁も任せられる。今季も大竹が台頭したように育成選手が戦力となっているだけに、育成ドラフトでどんな選手を指名するかも注目だ。

大学生では甲斐野央(左)や辰巳涼介(右)らに注目が集まる【写真:Getty Images】

「その年の1番いい選手」を指名の日ハムは根尾、楽天は東北のスター吉田か

◯日本ハム
 今季は低かった下馬評を覆し、3位に入ってクライマックスシリーズに進出。とはいえ、大谷翔平や増井浩俊ら2016年の日本一を支えた面々がチームを離れたため、西武、ソフトバンクに比べると、投打ともに手薄な感は否めない。日本ハムのドラフトの指名方針は「その年の1番いい選手」なのだが、昨季の清宮のような頭抜けた存在というと今季はなかなか難しい。育成に長けた球団だけに、野手なら根尾、投手なら吉田の高校生か。即戦力ならば、リリーフよりも先発に厚みを持たせたい。

◯オリックス
 福良監督が退任し、西村ヘッドコーチが新監督となったオリックス。チーム防御率3.69は12球団トップの一方で、チーム打率.244は12球団で最下位。となると、やはり野手を補いたいところ。小兵タイプの選手はチームに複数いるだけに、吉田正とともに中軸を担える打者が欲しい。小谷野が現役を引退したこともあり、内外野ともに手薄。地元出身の選手ということでも、大阪桐蔭の根尾や藤原をチームに加えたい。強みを伸ばすという意味で即戦力投手を加えて、より厚みを持たせても面白い。

◯ロッテ
 来季が井口監督体制で2年目となる。今季はリーグ4位のチーム打率.247、リーグ5位のチーム防御率4.04と、投手、野手ともに補強ポイントだ。内野手は井上、鈴木、中村、昨季のドラ1の安田という楽しみな存在もいるだけに、ポイントは外野手。打って、走れる大阪桐蔭の藤原や立命館大の辰巳は指揮官の求める選手のタイプに合致する。2位以下で即戦力となり得る大学生や社会人の投手を獲得したい。

◯楽天
 今季は開幕から低空飛行が続き、昨季の3位から最下位に転落した。今季はとにかくウィーラーやペゲーロら外国人、さらには松井裕や福山、茂木らの不振が大きく響いた。地元・東北出身のスターとして、金足農の吉田が1位の最有力候補となるだろうが、チーム編成としては、むしろ野手が欲しい。田中が急成長を遂げたが、もう1人、チームの核となる存在を加えたい。大阪桐蔭の根尾に加えて、外野が手薄なため藤原も候補。ウエーバー順ではリーグで最上位となるだけに戦略によってはドラ1候補を2人指名可能だ。(Full-Count編集部)

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