いじめ自殺なくすためには 遺族「違い認め合う社会に」

 一人娘の香澄さん=当時15歳=をいじめ自死で失った小森美登里さん(61)=横浜市港南区=の講演会がこのほど、神奈川県三浦市内で開かれた。小森さんは遺書や生前の言葉、生徒らへのアンケート結果などを踏まえ、被害者、加害者、傍観者それぞれの気持ちや、置かれた立場や背景を解説。「一人一人が違うことを認め合い、それでも傷つけてしまったときに『ごめんね』と謝ることができる教室や地域をつくれれば、いじめは決して解決できない問題ではない」と呼び掛けた。

 旧県立野庭高校1年だった香澄さんは1998年7月、自宅で自殺を図り、2日後に亡くなった。小森さんは2003年3月、NPO法人「ジェントルハートプロジェクト」を立ち上げ、理事として、いじめ根絶を目指して講演活動などに奔走している。

 16日に南下浦市民センター(三浦市南下浦町上宮田)で開かれた講演会で小森さんは、いじめを苦に自ら命を絶った13~17歳の子ども4人を紹介した。

 13歳の女子生徒は、遺書に「『たかがいじめくらいで…』と言うのもいるよ」との言葉を記した。小森さんは「家庭や施設の中で『虐待』とされることが、学校の中だと『いじめ』という表現になる」と指摘。「『いじめ』と言った途端、相談を受けた大人が『あなたが弱いからいけないんじゃないの?』と被害者の責任を生み出してしまう」と述べ、大人の受け止め方に警鐘を鳴らした。

 4人目には、香澄さんを取り上げた。まな娘は亡くなる数日前、「優しい心が一番大切だよ。その心を持っていないあの子たち(=加害者)の方がかわいそうなんだ」と話したという。小森さんは「『いじめをしているあの子たちの心にしっかり寄り添って』。そんなふうに言っているように感じている」と一人娘の思いを推し量った。

 小森さんは講演の中で、加害者や傍観者についても触れた。いじめる子どもの7割が「自分もつらく、苦しかった」と答えたアンケート結果を示し、「(命令されたなど)加害者に背景があるとしたら、その子のストレスにも目を向けた声掛けをしないと反省を促すことは難しい」と説明。また「傍観者は加害者」との見方に対して「(いじめの中に1人で飛び込めと)自分たちにもできないことを、子どもに無理強いしていないか」と疑問を呈し、「傍観者の立場として何かできることはないか、大人と一緒にみんなで考えることがとても大切」と訴えた。

 講演会は市青少年問題協議会と市の主催で、学校関係者や保護者ら約80人が耳を傾けた。

写真を手に、香澄さんが生前に残した言葉を紹介した小森さん=16日、南下浦市民センター

© 株式会社神奈川新聞社