【この人にこのテーマ】〈薄板軽量形鋼造建築物の現状と展望〉《日本CFS建築協会・脇田健裕代表理事》技術基準の作成や部材供給体制整備など、普及活動に注力

耐久性、防錆性、コストや施工面に利点

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 今年6月に発足した日本CFS(Cold―Formed Steel)建築協会。耐久性や防錆性、コストや施工面に優れる薄板軽量形鋼造の建築物の普及・促進を目的に、企業と大学研究機関による〝産・学〟一体の同協会で代表理事を務める脇田健裕氏(早稲田大学招聘研究員)に、CFS建築物の現状と今後の展望について話を聞いた。(伊藤 健)

――CFS建築物の概要について。

 「CFS建築物は、建材用薄板(亜鉛めっき鋼板)を冷間成形(ロール成形)した薄板軽量形鋼をドリルねじなどで接合する建造物で、板厚0・8ミリ~6ミリ未満の薄板軽量形鋼を使用する。日本では国土交通省の告示により、板厚2・3ミリ~6ミリが軽鋼構造、2・3ミリ未満は薄板軽量形鋼造に区分されており、薄板軽量形鋼造の分野では主に住宅や集合住宅、小規模店舗などが中心となっている」

――協会の概要、発足までの経緯などは。

 「2015年に薄板軽量形鋼造の建設に関わる実務者(建築・構造設計や鉄鋼メーカー、建設会社、パネル製造、ねじ・金物製造など)と早稲田大学による産学連携の研究会からスタートした。月に1回ペースで研究会を開催し、17年に発展的解消して、CFS工法普及準備会を新たに発足。構造や防耐火、技術や材料など各分科会による活動とともに、摩擦機構内蔵の耐力壁や高耐力金物などの構造部材の技術開発も進めながら、今年6月に『日本CFS建築協会(会長・曽田五月也早稲田大学名誉教授)』として正式に発足した」

 「協会の事業活動としては、CFS建築の普及活動に注力している。残念ながら一般の方々、また建築技術者の間でもCFS建築の認知度は現時点では非常に低い。技術解説書や設計支援プログラムが少なく、また建築技術者の教育プログラムなどもない。当協会としては、CFS建築物に関する各種技術基準の作成、CFS建築の性能・標準仕様の策定、また設計支援プログラムや、薄板軽量形鋼・金物類など部材の安定供給体制の整備、このほかCFS建築技術者の育成などを進めていきたい」

 「協会の組織構成としては、技術・開発委員会や事業委員会など常設5委員会があり、技術・開発委員会の中に構造や防耐火、生産技術や環境・整備、耐久性の5つの各研究開発プロジェクトがある。基本方針として、各プロジェクトの研究開発の主体は参加企業であり、当協会としては研究・技術の権利を原則有しない。協会は研究開発に関する意見交換や技術開発を支援する場所を提供して中立性を保つ立場である」

――CFS建築物の特長は。

 「主な利点として、軽量・高強度であるため、建物重量を軽くすることで地震力を軽減し、基礎や地盤改良工事を削減できる。省資源といった視点では、リサイクル性が高く、通常の鋼構造に比べて鋼材の使用量も削減でき、低コストで環境負荷が低い。重量鉄骨造との比較でも、同等以上の耐久性を確保することが可能である。一番古いとされるCFS建築物は1925年に米・バージニア州で建設された病院で、まだ現役で使用されていると聞いている」

 「また施工面では、薄板軽量形鋼をあらかじめ工場でパネルなどに製造することができるため、現場では溶接などの作業が不要。ボルトやドリルねじによる簡易的な接合で短期間のうちに施工ができる。素材の品質面においても、溶融亜鉛めっき処理を施した薄板形鋼は高い耐食性をもつため、木材建造物のようにシロアリによる被害や腐朽やカビ、クリープ変形などの心配も少ない」

 「CFS建築物の研究や普及が進んでいる米国では、ハワイ州において1990年代に木造住宅のシロアリ被害が相次いだ。このため薄板軽量形鋼造の住宅が増加し、2000年代初頭にはハワイの新設住宅の7割以上をCFS建築造が占めることとなった。また豪州でも全住宅の12%がCFS建築によるものとの統計データがある」

木材との〝ハイブリット住宅〟も提案

――日本での建築実績、現状については。

 「日本では阪神淡路大震災の復興用の仮設住宅で建設した輸入のスチールハウスが最初のCFS建築物と言われている。その後、鉄鋼メーカーの団体『鋼材倶楽部』とスチールハウス協会が中心となって主に普及活動を進めてきた。国内の建築実績は、スチールハウス協会調べによると、2016年度の市場シェアは約0・2%(16年度着工戸数1896戸/97万4137戸)に留まっている。当協会としては、鉄鋼メーカーが普及に向けて活動してきたこれまでの流れ、貢献を引き継ぎ、日本およびアジア地域でCFS建築物の普及活動に努めていきたい」

 「日本では準耐火物3階建て建築物ではコスト競争力が高く、建築実績も比較的多い。しかし住宅分野ではCFS建築の良さがあまりPRできておらず、木材住宅が大半を占めている。木材と競合するのではなく、構造体はスチールだが、仕上げ部材(内装)はふんだんに木造などを使うような住宅も提案していきたい」

 「例えば人間の身体は、内部の骨格(骨)がカルシウムで無機物、一方、外側の皮膚や筋肉は有機物である。これを住宅に置き換えると、骨格にあたる構造物は無機系材料の薄板軽量形鋼を使用し、表面に触れる壁や床などには木材や畳などの有機系素材を使う。伝統的な木材住宅とCFS建築を組み合わせた〝ハイブリット住宅〟の建築事例もあり、グッドデザイン賞を受賞するなど注目されている」

――協会活動の今後の展望について。

 「協会では日本およびアジアでのCFS建築物の普及促進を掲げている。東南アジア地域は人口が増加傾向にあるが、住宅産業はまだ未成熟にある。住宅の材料としても、木材はあまり流通しておらず、住宅はレンガ造もしくはRC造が多い。しかし結露や腐朽など住環境への課題も多いとされている。当協会としては、アジア地域の住宅市場でもCFS建築を普及していきたいと考えている」

――協会の最近の活動、トピックスについては。

 「協会発足以降、各委員会が実際に活動し始めている。アジア地域への展開としては、海外事業委員会において12月5~8日にベトナム・ハノイで開催される展示会『Contech Vietnam2018』へ出展する準備を進めている」

 「また技術・研究委員会でも引き続き、耐火や構造性能の評価、試験を進めており、年度内には公的機関による評価、確認申請を済ませて、来年度には当協会によるCFS建築物の初受注を目指したいと考えている。中長期的には、22年度までに国内の住宅市場でシェア1%を達成したい」

 「そして一番の課題として一般の人々へのPR活動。施主であるユーザーへの認知が広がり、CFS建築への高い評価が出てくれば、住宅メーカーや建設会社、設計会社らはそのニーズに応えようと動き出す。一般の人々に向けては、書籍やパンフレットを作成して普及活動を進めていきたい」