一度に100人死傷も…北朝鮮「魔の道路」でまたもや死亡事故

北朝鮮を訪れた外国人観光客からよく聞かれるのが、道路事情の劣悪さだ。平壌市内ですら道はガタガタ、高速道路も穴だらけ、世界遺産に向かう道も非舗装のでこぼこ道だったりする。

僻地の道路事情はさらに劣悪で、事故が多発している。特に、北部山間部にある両江道(リャンガンド)の道庁所在地・恵山(ヘサン)と、「革命の聖地」として知られる三池淵(サムジヨン)を結ぶ道路はひどい。この区間は、今年に入ってから5件もの交通事故が起きている「魔の道路」だ。

観光客も犠牲に

今年3月には、貨物トラックと乗用車6台による事故が発生。76人が死亡し、30人余りが重傷を負った。この日1日で、両江道では事故が相次ぎ約300人が死亡した。

この区間では今月8日にも、一度に6人が死亡する痛ましい事故が起きた。

今回の事故に遭った一行は、中国に輸出する松の実を取るために山奥に向かった帰りだった。貿易事業所所属の8トントラックが横転し、荷台に乗っていた6人が投げ出され死亡。ドライバーと助手席に乗っていた貿易事業所の職員2人は重傷を負い、病院で手当てを受けている。

貿易事業所にバイトとして雇われた6人は、荷台に満載された松の実の上に乗っていたため、事故の際に車外に投げ出されてしまったものと思われる。事故の知らせを聞いた近隣住民が負傷者の救助に向かったが、遺体と松の実が散乱する惨状に言葉を失ったという。

経済制裁下に置かれた北朝鮮では、松の実などの植物が格好の外貨稼ぎの材料となっている。

事故原因は明らかになっていないが、現場を目撃した住民は、道路状態の悪さ、トラックの老朽化、急な坂道、過積載などが様々な要因が重なって事故が起きたと見ている。

状態がまだマシな高速道路でも交通事故が起きている。今年4月、平壌と開城(ケソン)を結ぶ高速道路で中国人観光客を乗せたバスが事故を起こし、36人が死亡している。

事故多発の原因は道路状態だけではない。北朝鮮で運転免許を取得するには何年も教育を受けて様々な手続きが必要だが、面倒さを嫌ってワイロを払い手っ取り早く免許を取得する人が少なくないと言われている。まともな交通安全教育を受けていないドライバーが大勢いるのだ。

© デイリーNKジャパン