【住友商事鋼管本部のエネ分野の新戦略】SCM高度化で顧客基盤拡大 複合素材管メーカーに出資など新サービスを展開

 住友商事の鋼管本部(横濱雅彦本部長)は今期から始まった新中計で、オイル&ガス分野の新たな戦略を打ち出している。先進技術の融合などにより、得意分野である長契やSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)のメニューをさらに高度化。また、世界各地にある問屋網、加工・サービス会社のそれぞれの業容を精査し、合理化やサービス拡大を図っていく。

 前期、鋼管本部の扱い数量は390万トン。前期比で増加し、本部としては2期ぶりに黒字に転換した。在庫評価損や事業会社の減損などはあったが、米国の法人税減税なども米国内事業会社の採算向上に寄与した。

 今期、油井管市場では北米や中近東の活況が続く見通し。アジア地域も今後の需要増が期待される。また、これまで国営石油会社が独占してきたオフショア案件が公開入札され、シェルやエクソンモービル、トタールなどが相次いで札入れを行っており、「早ければ19年末くらいから案件は出てくる」(横濱本部長)と見ている。来期以降はここ数年低調だったラインパイプの大型案件も見込まれる。

 こうした市場環境に対応するため、住友商事の鋼管本部は、今中計で「顧客の調達活動を高度化するプラットフォームの構築、顧客側から見た利便性や経済性の追求」を基本コンセプトに置く。すでに、OCTG分野ではマレーシアのペトロナスとの長契更新、クウェート国営石油会社向けで3年間の契約受注、オマーンで英BP向け新規長契の締結などを手掛けた。

 基本戦略のSCMの高度化については、既存在庫管理システム(TIMS)を刷新。また、欧州の顧客が出資しているIT子会社にスタッフを1人派遣。米州住友商事(SCOA)のシリコンバレー店にもスタッフを出している。はじめは、デジタルの側面から自分たちのビジネスに活用できるツールなどを油井管・周辺機材分野で追求。将来的には、化学品や物流分野など他の商材・ビジネスの知見を借りながら、新しいプラットフォームを作っていく。

 すでに、一部具体的な成果も出てきた。今年3月には、オランダの複合素材パイプメーカーであるエアボーンオイル&ガス社に出資。同社のガラス繊維や炭素繊維に、合成樹脂を組み合わせた複合素材パイプ「TCP」をラインアップに加えて、顧客基盤を拡大する。

 米国ではSCOAが出資したトレーサビリティ技術会社のトゥルータグ、3Dプリンター会社のアレボなどの新技術のサプライチェーンへの活用を模索している。また、金属積層造形大手一次メーカーのシンタビアとは、住商の油井機器部品製造会社ハウコと事業開発面などでのシナジーが期待される。

 問屋の物流網、バリューチェーンのさらなる拡充については、北米で今年3月に米国三井物産からチャンピオンズ・シンコー・パイプ&サプライ社を買収。一昨年にエジェングループから油井管問屋のB&L社を分離して、住商グループの米国油井管問屋の一社であるパイプコと統合したB&Lパイプコは、グループの北米油井管問屋の中で有数の問屋となった。特殊管、国内鋼管分野では、事業再編や顧客に対するサービス強化の取り組みを進めていく。

 加工・サービス会社では、ハウコはシンタビアと協議中の共同開発案件にも注力。OMSは最大拠点であるシンガポールの能力を増強。コンダクターと油井管特殊ねじ継手VAMの加工やアクセサリーに加え、油井周辺資機材(OFE)領域への対応を強化する。

 その他、拠点間で共用可能なシステムや人材管理、財務、在庫などの分野は共通化して効率的な体制に。今年4月には鋼管本部内で「エネルギー資機材・サービス事業部」を新設した。旧鋼管企画開発部の事業開発機能と油井管事業部で見ていた油井資機材・サービス事業を統合。新技術・新領域における事業開発を積極的に進めていくとともに、周辺資機材・サービスなどの商材拡販に一層注力していく。

 本部の枠にとらわれないさまざまな産業界の技術、機能やツールを活用して、既存SCMや問屋網、バリューチェーンに新たなサービス体制構築を試みる住商の鋼管本部。顧客目線でのサービス深化を目指す。

© 株式会社鉄鋼新聞社