3年前の新聞

 先日訪れた飲食店で、店主から「3年前の新聞切り抜きを持って訪ねてきてくれたお客さんがいたんですよ」という話を聞いた。本紙「寄ってみんね」のコーナーに登場してもらったことがある▲いつかこの店に来たいと、その客は切り抜きをずっと手帳に挟んでいた。毎年手帳を取り換えても切り抜きは捨てずに取っておいてくれた、その気持ちがうれしかったと店主は言う▲3年前の切り抜きに載っていた自分の写真は今より少し若かった。「新聞って時間を超えて人と人をつなぐこともできるんですね」との言葉に、こちらもうれしくなる▲政治や経済、事件事故からイベント、お店の紹介…新聞には多種多様な話題が載る。その日その時の世の中の空気が紙面に封じ込められている▲3年前の世の中はどうだったか。2015年の新聞をめくってみた。集団的自衛権行使を可能にする安全保障関連法が成立した年。長崎の平和祈念式典で平和への誓いを述べた被爆者代表は、存命だった谷口稜曄さんだった▲沖縄では辺野古埋め立てを巡り、政府と県が法廷闘争に突入した。本県では石木ダム予定地の強制収用を巡って反対住民が行政訴訟を起こした。これらの記事に関心を寄せていた読者と現地の人がつながることで、問題解決へ前進するとうれしいのだが。(泉)

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