中学校の8割超が学級数「標準」未満 小学校は7割超 存続か、統廃合か 行政はジレンマ

 少子化を背景に、長崎県内の市立、町立小学校の7割超、中学校の8割超で、国が標準学級数とする規模(12~18学級)を下回っていることが長崎県教委への取材で分かった。学級数が少ないと児童、生徒が集団生活を身に付ける機会が減るデメリットなどが指摘される一方、地域の交流拠点として、学校存続を望む声も根強い。子どもや地域にとって最善な学校の在り方とは-。市町教委の模索が続いている。

 学校基本調査によると、少子化を主因に、長崎県内では過去10年で公立小46校、公立中21校が減った。県教委のまとめでは、2017年5月現在、休校と分校を除く県内市町立小学校の約72%に当たる233校、中学校の約84%に当たる142校がそれぞれ12学級を下回っている。少子高齢化が進む離島や半島地域で、その傾向が顕著だった。標準未満の学校のうち、小学校78校、中学校10校で複数の学年の児童、生徒が一緒に学ぶ複式学級を導入している。

 小規模校では入学から卒業までクラスが同じ顔触れのケースが多く、長崎県教委などによると、マイナス面として、一般的に人間関係の固定化などが挙げられるという。いじめが起きた場合にクラスを引き離すことが難しく、切磋琢磨(せっさたくま)する機会や部活動などの種類も制限される、などの問題が指摘されている。財政面でも、適正規模校に満たない学校が地域に複数あると、校舎などの維持管理費も負担が増える。

 一方で、地域の実情を踏まえると、統廃合の議論は簡単ではない。人口減の中で、学校が地域の交流拠点としての役割を増しているからだ。

 「学校は交流の場。地域に活気が生まれる」と話すのは、長崎県長崎市伊王島町船津自治会の高田正男会長(69)。伊王島町内の小中学校は複式学級がある「過小規模校」だが、小中学校の運動会は地域住民も参加し、交流が盛ん。「地域から学校がなくなれば、子育て世帯が離れていきかねない」と懸念する。

 こうした中、行政はジレンマを抱える。西海市内の全小中学校で標準規模を下回る西海市。西海市独自の基準に沿い、統廃合計画を作るが、西海市教委は「学校は地域のシンボル的な存在で、統廃合は難しい課題。丁寧な説明で理解を求めたい」。新上五島町教委も「地域の防災拠点になっており、存続を求める地域の声もある。正解が分からない難しさがある」とする。

 長崎大大学院教育学研究科の畑中大路准教授(教育経営学)は「ICT(情報通信技術)の活用など、知恵を絞ることで小規模校の教育上のデメリットを解消できる。統廃合ありきではなく、慎重な議論が求められる」としている。

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