サイバー犯罪 長崎県警があの手この手の強化策 治安で不安感じる場所「ネット空間」1位 内閣府調査

 インターネットやスマートフォンの普及によって増加する「サイバー犯罪」に対応するため、長崎県警はあの手この手の強化策に取り組んでいる。今年から新たに、高校生が講師となり小中学生にネット使用時の注意喚起をする巡回指導を開始。長崎県内の経済団体や大学など産学官を巻き込む協定を結び、部署の垣根を越えたサイバー捜査官の育成にも力を入れている。

 ■79人に委嘱

 「スマホによって人生設計が崩れるかもしれない。(画像など)1度送ってしまったら無かったことにはできません」
 9月下旬、東彼波佐見町立波佐見中の3年生約130人を前に、佐世保高専の生徒が呼び掛けた。年の近い先輩の言葉に、ある生徒は「同じ目線で話をしてくれて分かりやすい」と熱心に耳を傾けていた。

 長崎県警は本年度、情報処理などに詳しい高校生の知識を生かそうと、長崎県立校3校と同高専の計4校の生徒79人を「サイバーセキュリティボランティア」に委嘱。生徒は小中学生への「情報モラル」の伝え方を専門家に学び、講義に臨んでいる。これまでに四つの小中学校で実施し、年度内に10校程度を巡回する予定だ。

 長崎県警警務課によると、現役高校生が指導側に立つ活動は全国でも珍しい。世界的にはサイバー攻撃に対し、高度な技術を持つホワイトハッカー(正義のハッカー)を活用する動きも活発化しており、長崎県警警務課の担当者は「(講義を通じ)勉強した知識が役に立つという成功体験を得て、将来その知識を社会に還元してもらえれば」と先を見据える。

 ■増える摘発

 長崎県警は昨年1年間で、不正アクセスや詐欺事件などネットを利用した61件のサイバー犯罪を摘発。今年は9月末時点で既に74件を摘発している。

 内閣府の世論調査(2017年)によると、治安で不安を感じる場所は「ネット空間」が1位、警察に力を入れて取り締まってほしい犯罪は「ネットを利用した犯罪」がトップ。そのような社会情勢を背景に、サイバー犯罪への捜査力の底上げが急務となっている。

 犯罪に悪用されたパソコンやスマホに保存されている画像やメールなどのデータは、犯罪捜査において逮捕の端緒になったり、重要な客観証拠になったりする場合が少なくない。そこで、長崎県警は今夏、長崎県内全23の警察署でパソコンやスマホ内のデータを解析する実際の機器を用いた研修を初めて実施。部署に関係なく、約100人の警察官が最先端の技術を学んだ。

 今後は本部の各部署も対象にし、サイバー捜査に強い人材を増やしていく方針。また、長崎県内の経済団体や大学など産学官14機関と協力協定も結んでおり、社会の課題としてサイバー犯罪への意識向上を促していく考えだ。

 長崎県立大情報セキュリティ学科の小松文子教授は「取り締まりだけでなく、未然の防犯が重要。その点で身近な高校生による指導は伝わりやすく効果的」と指摘。「セキュリティーは情報連携が大事。もし、企業や大学などが危険を感じたり、被害を受けたりした場合は内容を共有し、社会全体の教訓にする取り組みを広げていく必要がある」と話す。

講師の高校生の話を熱心に聞く中学生=東彼波佐見町立波佐見中
専用の機器を使い、スマホ内のデータ解析を研修する警察官=長崎県警本部

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